研究課題/領域番号 |
19K15151
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
山本 高広 香川大学, 創造工学部, 助教 (30838579)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 住宅の給湯負荷 / 住宅の電力負荷 / 実測調査 / エネルギー消費行動変容 |
研究実績の概要 |
研究企画時の研究目的には大きな変更はないものの、COVID19の感染拡大に伴い、事前の研究目的、研究手法、研究対象に再検討が必要な状況となった。当年度はCOVID19の収束を待ちつつ、生活スタイルの安定化を待つ必要からも、計測手法の修正を中心に作業を進めた。具体的には、当初直接訪問を予定していた郵送などでのセンサー送付、設置、メンテナンスの実施方法の再検討、行動変容を企図したデバイスの開発もできる限り現地での設定を排し、Wifi接続などの操作を極力排し、電源をONにしたと同時に計測、表示を開始するなどの再設計を実施した。 計測開始に向けた取り組みとして、県外移動の制限などを考慮する必要のない研究拠点所在地近傍の数件の実測を開始し、修正した方法で実測が可能か実地テストを行った。また、行動変容デバイスについては、高性能ながら設定項目や作業が多いRaspberryPiの使用を取りやめ、より単純なM5Stackで構成するシステムに修正し、行動変容実験の試行として大学、文教施設における行動変容実験を実施し、長期間安定して実測が可能であることを確認するとともに、他県の協力事業者に郵送で物品を送付し、遠隔で計測・実験を行いうることを確認した。 本研究で対象とするエネルギー消費は、気象条件の影響が大きく、様々な状況を想定するためには多様な気候区分に所在する住宅を対象に実施することが望ましい。しかしながら昨今の状況では広域に計測サイトを点在させることは難しく、上記の点に目をつむって特定地域に限定した実測とする予定である。また、COVID19による生活様態の変化や感染状況によって間欠的に発生する外出、活動自粛の影響から当初計画のように、1年目不介入、2年目介入などといった形で実験期間を分割することは困難であるため、実験のスケールを小さくし、2週間程度で実査可能な内容に項目を見直す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初計画では1年目デバイス構築、2年目実測開始、3年目介入実験の予定であったが、1年目から2年目にかけて研究拠点が移動し、県外に転出したことや、COVID19の影響で県外への移動が制限されたことなどから、全体的に研究は遅れている。要旨を以下に整理する。 ①COVID19の収束を待ち実査を始める予定であったが、現時点でも収束のめどは立たず、当初想定した実験の前提が成立していない。具体的には、当初の計画では1年目は生活に介入せず、できる限り標準的で自然な状況の電力、給湯負荷を実測し、その後2年目以降様々な働きかけを行い、1年目の自然な状態と比較して行動変化が消費エネルギーに与える影響を評価する予定であった。計測、実験協力を仰ぐために支出する実験協力謝礼も有限であることから、このような前提で計測、実験を行うにはコロナの収束を待つのが妥当と考えたが、この点は近いうちにCOVID19が収束し、実験が開始できるだろうという判断ミスがあったと言わざるを得ない。 ②研究実績の概要(Summary of Research Achievements)に示した通り、給湯負荷や電力使用の時系列の変動は、地域、気象条件によって変動するため、できる限り多様な気候下での実測が望ましいが、この点についても対策が必要であり、計測方法の大幅な修正が必要な状況であった。 ③本研究で特に重視する、日中在宅時間が長く、行動変容の余地が大きく、全世帯に占める割合が大きいものの実態が十分把握されていない「高齢単身世帯」、「高齢夫婦世帯」であることから、万一感染した場合のリスクが大きく、既存の方法では電力量計設置などの目的から住宅内部に入る必要があることから、当初の方法では実測の開始は難しいと判断したためである。この点については今年度以降も慎重に考える必要があるが、対策を講じつつ実査に入る予定である。
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今後の研究の推進方策 |
COVID19の収束を待ち、計測機設置を1年程度遅らせてきたが、これ以上の研究遅延は当初の目的を達成できなくなる恐れがあることや、副次的成果とはいえCOVID19の蔓延という特殊な条件下のライフスタイル、エネルギー消費行動にも一定の学術的価値が見込めることから、給湯負荷データの収集と行動変容に関する取り組みが定量的にどのような効果を生むのか、というテーマ自体は維持しつつ細部を再検討し、当年度より実測を開始する。仮に近いうちにCOVID19が収束したとしても、変わった生活習慣(ニューノーマル)が一般的な生活習慣として巷間に定着するまで時間がかかるものと予想されることから、より長期の実測調査継続を見込み、研究の進め方を以下のように修正する予定である。 ①香川県下および近県を対象に実測対象を選定する。気候条件の問題には目をつむる形となるが、限られた期間で実験を行うためには、移動の便が良いことが何よりも重要と思われるため、移動の制限がかからない、比較的リスクが低いであろう香川県下および近県で計測協力者を募集数する。(令和3年5月10日時点ですでに複数件の同意を得ており、第四波の収束を待って計測を開始する予定である) ②より長期間の計測、調査の科研費交付終了以降の継続も企図し、計測機のメンテナンス、データ回収などに要するラングコストを抑制しうるよう計測システムを修正する。先の通り計測ユニットはより安価かつ単純な仕様のものに改め、ローコストで計測を実施しうるよう準備を進めている。 ③エネルギー量そのものの変容も可能な限り実測するが、より細かい事柄(窓開けをしたか、エアコンをどのように使用したか、などといった個々のエネルギー消費行動)を定量的に計測する。これはCOVID19による外出抑制が間欠的に発生するため、長期間のエネルギー消費量の比較が意味をなさなくなる可能性が高いためである。
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次年度使用額が生じた理由 |
前項に示した通り、当初の予定ではCOVID19の収束を待って実測を開始する予定であったが、第三波、第四波の影響から実測を開始できず、該当年度の執行が不可能な状況であったためである。当年度はCOVID19の状況によらず計測を開始する予定であるため、物品費、謝金、その他については当初計画に沿った執行を検討しているが、県外移動の制限などから出張費などは見直し、計測点の増設や通信環境の整備などに使用する予定である。
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