難燃処理木材を外装材などの降雨環境下で使用する場合、薬剤の溶脱にともなう防火性能の低下が懸念される。しかしながら、降雨などの環境条件が薬剤溶脱および防火性能低下に与える影響に関しては、まだあまり検討されておらず、降雨に伴う経年劣化が難燃処理木材の防火性能の低下にどの程度影響を与えるかは明らかとされていない。 そこで、本研究では、難燃処理木材の吸水・脱水が薬剤溶脱に与える影響を明らかにするとともに、経年劣化を考慮した防火性能を解明することを目的とする。 木材における難燃薬剤の固着箇所及び溶脱箇所の測定手法を確立した上で、吸水・脱水が難燃処理木材の薬剤溶脱に与える影響の検討を行い、難燃処理木材中の薬剤残存量・分布と防火性能の関係性を明らかとする。 本年度は、蛍光X線分析(XRF)の元素マッピングを用いて、耐候操作後の難燃処理木材を対象に試験体断面の薬剤分布を測定し、難燃処理木材内部の薬剤残存状態と防火性能との関係を検討した。また、表層塗装が薬剤溶脱に及ぼす影響を確認するため、塗装を変更した難燃処理木材に対して、その吸水性および薬剤溶脱性能に関して検討を行った。XRFの測定結果より、表層部での薬剤溶脱の様子が確認され、耐候操作前後の重量変化で算出した薬剤残存量と比較し、防火性能の低下とより相関があることが確認された。また、3年間の自然曝露後と今回実施した促進耐候試験後で比較すると、自然曝露後の方でより薬剤が溶脱している様子が観察された。
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