研究実績の概要 |
室内空間において呼吸器から発生するエアロゾル粒子への曝露量に与えるデスクパーティションの影響を調査するため、飛沫を含むヒトの咳を模擬することができる模擬咳発生装置を用いた実験を実施した。結果として、マスク着用により室内へのエアロゾル粒子発生量が大幅に低減し、島型デスクの執務者呼吸域における曝露量も低減した。各座席の前・左右のデスク3方をパーティションで囲むボックスパーティションでは、パーティション自体が室内気流を遮るために発生源周囲にエアロゾル粒子が滞留して濃度が高くなり、拡散に時間を要する傾向が見られた。感染性エアロゾル粒子の吸入による感染リスクには、咳や会話等により発生するエアロゾル粒子に発生源近傍で直接的に曝露されるリスクに加え、換気の不十分な室内空間においてエアロゾル粒子の濃度が上昇し、そこに長時間滞在することで間接的な曝露量が多くなるリスクが考えられる。直接的な曝露に対しては、特にマスクの着用が有効であり、また感染者と被感染者の間にパーティションを設置することも有効である。一方で、室内空気を介した間接的な曝露に対しては、パーティションの設置による効果は換気システム、気流性状によって異なり、必ずしも感染リスクを低減せず、特にパーティションにより空間を細かく区画化するような場合にはリスクを増大させる可能性もある。もしも直接的な曝露を低減するためのマスク着用等に加えて補完的な対策としてパーティションを設置する際には、必要換気量を確保した上で、給気口、排気口の位置などの換気システムを確認し、空気がよどみ換気の効果が低下する場所ができないように留意する必要がある。 共著者として、新型コロナウイルス感染症対策のための空調および衛生設備の運用についてレビュー論文を出版した(Kurabuchi T, Yanagi U, Ogata M et al., JAR, 2021)。
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