研究課題/領域番号 |
19K15155
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
大橋 巧 摂南大学, 理工学部, 准教授 (80625921)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地域冷暖房 / エネルギーサービス / 面的利用 / 往還温度差 / 設備保全費 |
研究実績の概要 |
地域冷暖房システムは省エネルギーを推進する上で有用な手法であるが、プラント側にとっては販売した熱量により対価を得るビジネスモデルであるため、省エネルギーの高度化には課題もある。そこで本研究は、熱量ではなく居住者が最終的に求める一定の「温熱環境」や「光環境」をビジネスの供給対象とするモデルを想定し、一つの事業主体が統合的に設備運用することで、プラント側と需要側双方がメリットを享受しつつ省エネルギー化が促進される仕組みの構築が可能か検証を行うものである。 1)熱搬送距離が長くなる地域冷暖房システムでは、エネルギーを多消費する搬送動力の削減が課題となるが、これには往還温度差の確保が極めて重要となる。令和2年度は、前年度実施した全国136営業地域の事業者に対するアンケートを活用し、冷水・温水の往還温度差の実態を分析した。往還温度差の問題は、一般に需要側の設備システムやその運用に起因するため、プラント側が関与できる改善策は限られるが、分析の結果、特に低負荷時において規定の温度差が確保できていない傾向や、約10年前の既往調査と比較しても改善が見られない実態などを把握した。一方で一部の営業地域では年間を通じて規定の温度差がほぼ確保できていることも把握でき、新たなサービスモデルではこの問題の統合的な改善も目指しやすいことから、エネルギー消費量削減の可能性を確認した。 2)前年度、全国の平均的な規模の地域冷暖房地区を想定したモデルにおいて、新たなサービスモデルのコスト収支の算出を行ったが、令和2年度はこの内容をさらに精査し、熱需要や熱源側のエネルギー効率、建物側の空調・照明エネルギー、建物側設備保全費など、各種パラメータを変数として与えた場合の事業成立性の感度分析を行った。結果、他の項目と比較し、建物側設備保全費の削減が、本サービスの実現可能性を評価する上で、特に重要な項目であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画にあった、「既存DHC地区の実態調査」は、日本建築学会技術報告集(査読付き)に発表するなど、成果を上げることができた。また、研究実績の概要1)に示す分析含め、日本建築学会大会学術講演にこれまで計4報を発表している(うち1報は発表予定)。 「設備保全費を考慮した可能性モデルの検討」においては、研究実績の概要2)に示す分析含め日本建築学会大会学術講演にこれまで計2報を発表している(うち1報は発表予定)。 これまでに、既存地域冷暖房地区の省エネルギー化に向けた実態と課題を明らかにし、新たなサービスモデルの可能性を多角的に評価しており、当初予定通りの進捗を得ていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、これまでの成果に基づき、当初の計画通り新たなサービスモデルによる省エネルギー効果を定量化するため、シミュレーションツールを用いた分析を行う。具体的には特定の地域冷暖房地区を想定し、プラント側・需要側の統合制御や室内環境保証型サービスによるエネルギーの削減効果を検証するものである。また、今後、照明や発熱機器の省電力化が進んだ場合を想定したケーススタディも実施し、実現可能性を詳細に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
・次年度使用額が生じた理由:COVID-19 感染拡大により旅費の使用がなかった、研究補助者への謝金が予定を下回った等の理由により、直接経費146,873円の使用額の差が生じた。 ・次年度は当初計画の直接経費500,000円に加え、学会発表費の増加や未調達の備品購入が見込まれ、繰越分は主にこれに充てる。(直接経費計646,873円の使用を計画する)
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