研究課題/領域番号 |
19K15158
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研究機関 | 熊本県産業技術センター(ものづくり室、材料・地域資源室、食品加工室) |
研究代表者 |
堀川 真希 熊本県産業技術センター(ものづくり室、材料・地域資源室、食品加工室), その他部局等, 研究主任 (50588465)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 遮光 / PEDOT |
研究実績の概要 |
本研究では、導電性セルロースナノファイバー(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/硫酸化セルロースナノファイバー(PEDOT/s-CNF))を遮熱材として樹脂に混ぜ合わせることによって、透明性と熱線吸収能を併せもつ新しい遮熱中間材料の開発を行うことを目的とした。令和2年度は、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PolyNIPAM)にPEDOT/s-CNFとカルボキシメチルセルロース(CMC)ナノファイバーを加えて、自律的に光透過を制御できる複層ガラスの調製を行った。PolyNIPAMのみの水溶液を用いた複層ガラスでは、温度変化による透明-白濁の温度応答を繰り返すことにより、相分離によって表面が不均質になることが問題であったが、保水材としてCMCナノファイバーを加えることにより均質になることを確認した。水溶液中のPolyNIPAMとCMCナノファイバーおよびPEDOT/s-CNFの混合比は、0.495:0.495:0.01(wt%)とした。1 mm厚のスペーサーを用いて2枚のガラスに混合溶液を挟み込み、複層ガラス(PolyNIPAM+CMCナノファイバー+PEDOT/s-CNF)を作製した。4.8 L容量の断熱ボックス上部に複層ガラスを設置し、擬似太陽光を30分間照射して、断熱ボックス中の温度をモニタリングした。比較として、中間層が空気およびPolyNIPAM+CMCナノファイバー水溶液を挟み込んだ複層ガラスも用いた。PolyNIPAM+CMCナノファイバーを中間層に用いた場合、中間層が空気の場合と比較して、断熱ボックス内の温度上昇を抑制できることを確認した。PolyNIPAM+CMCナノファイバー+PEDOT/s-CNFでは、さらに温度上昇の抑制ができることが確認された。PEDOT/s-CNFを加えることにより、中間層が熱線を吸収しやすくなり白濁化時間が早まったことが影響していることが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度(2020年度)は、PolyNIPAMにPEDOT/s-CNFとCMCナノファイバーを加えて、自律的に光透過を制御できる複層ガラスの調製および温度抑制効果の評価を行った。PolyNIPAMのみの水溶液を用いた複層ガラスでは、温度変化による透明-白濁の温度応答を繰り返すことにより、相分離によって表面が不均質になることが問題であったが、保水材としてCMCナノファイバーを加えることにより均質になることを確認した。PolyNIPAMとCMCナノファイバーおよびPEDOT/s-CNFの比が、0.495:0.495:0.01(wt%)となるように溶液を調製して、1 mm厚のスペーサーを用いて2枚のガラスに混合溶液を挟み込み、複層ガラスを作製した。4.8 L容量の断熱ボックス上部に複層ガラスを設置し、擬似太陽光を30分間照射して、断熱ボックス中の温度をモニタリングした。サーモカメラにて基板の表面温度の観察も行った。比較として、中間層が空気およびPolyNIPAM+CMCナノファイバー水溶液を挟み込んだ複層ガラスも用いた。PolyNIPAM+CMCナノファイバーを中間層に用いた場合、中間層が空気の場合と比較して、断熱ボックス内の温度上昇を抑制できることを確認した。PolyNIPAM+CMCナノファイバー+PEDOT/s-CNFでは、さらに温度上昇の抑制ができることが確認された。PEDOT/s-CNFを加えることにより、中間層が熱線を吸収しやすくなり白濁化時間が早まったことが影響していることが考えられる。PolyNIPAMとCMCナノファイバーにPEDOT/s-CNFを加えた場合、加えなかった場合と比較して、全面白濁時間を短縮することができた。 以上のことから計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度(2020年度)は、PolyNIPAMにPEDOT/s-CNFとCMCナノファイバーを加えて、自律的に光透過を制御できる複層ガラスの調製および温度抑制効果の評価を行った。令和3年度は、PolyNIPAMの共重合体を用いて、光透過の制御温度を変化させることを検討する。PolyNIPAMにCMCナノファイバーとPEDOT/s-CNF の組成の最適化を行う。PEDOT/s-CNFは共役系が伸びる程、導電性および熱線吸収能も高くなることが知られているため、さらにPEDOT/s-CNF単独の高導電化および熱線吸収能の向上についても並行して検討を進めていく予定である。複層ガラスを作製して、人工太陽光を用いた照射試験を行い、温度上昇の抑制効果を評価して、高性能の遮熱ガラスの開発を行う。透過率およびラマン分光分析などにより、構造解析も実施する予定である。
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