令和3年度は、PolyNIPAM共重合体と多糖ナノファイバーとのコンポジットを調製して複層ガラスの中間層に用いることにより、複層ガラスの白濁化の温度(下限臨界溶液温度、LCST)が制御できることを確認した。PolyNIPAM共重合体の極性を調整することにより、白濁化温度を制御することが可能となった。白濁化温度を制御する別手法として、PolyNIPAMホモポリマーと多糖ナノファイバーのコンポジットにポリオールを添加する方法についても検討を行い、温度制御が可能であることを確認した。上記の材料に熱線吸収材としてPEDOT/s-CNFを添加することにより、白濁化の時間を短縮することができた。 PEDOT/s-CNFは導電性に比例して熱線吸収能も高くなるため、高導電化についても検討を行った。s-CNFとPEDOTの複合化工程において、ポリトロンホモジナイザーを用いてs-CNFおよびEDOTモノマーを分散させて複合化を行うことにより、導電性能および熱線吸収能の高いPEDOT/s-CNFが得られることを確認した。 4.8L容量の断熱ボックス上部に複層ガラスを設置し、擬似太陽光を照射して断熱ボックス内の温度のモニタリングを行った。LCSTが30℃以下のPolyNIPAMコンポジットにPEDOT/s-CNFを添加したものを複層ガラスの中間層に用いた場合、断熱ボックス内の温度上昇が抑制され、高性能の複層ガラスを作製することができた。PEDOT/s-CNFが熱線を吸収して中間層の温度が上昇しやすくなった結果、白濁化速度が迅速化されたことが影響していることが考えられる。
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