研究課題/領域番号 |
19K15159
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
渡部 典大 北海道大学, 工学研究院, 助教 (80823400)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 都市デザイン / 積雪寒冷都市 / 屋外利用行動 / 公共空間 / オープンスペース / デザインガイドライン / 札幌市都心部 / 都心再開発 |
研究実績の概要 |
本研究は、積雪寒冷都市における望ましい公共空間デザイン手法の構築に向けて、積雪寒冷都市特有の冬の利用行動を促進する、冬の魅力を生かした公共空間デザインガイドラインを開発することを目的としている。2019年度は、世界でも有数の積雪寒冷都市である札幌都心部・広場での利用行動調査により以下を明らかにした。 屋外環境の変化に伴う利用行動について、次の6点を明らかにした。1)歩行者数は約8℃から0℃において、8℃以上の時の6割程で横ばいになる。歩行者数は0℃を下回っても、8℃以上の時の4割程度は残存する。2)歩行経路は、積雪時では圧雪位置やロードヒーティング上に集中する。3)着座組数は14℃から減少し始め、7℃でほとんど見られなくなる。4)着座場所は、7℃以上では日向が好まれる。5)立止りのうち写真撮影は、10℃前後で紅葉がみられると増加する。6)雪遊びは、圧雪エリアと段差等に残る未圧雪エリアとの境界で起こりやすい。 また、気温の低下によらない利用行動として次の4点を明らかにした。7)歩行経路は、エントランスを結ぶ最短経路上に集中する。8)着座は、着座面として計画されていない段差上でもみられる。9)立止りは、歩行者に対して10-30%程の一定の割合で起こる。10)立止りのうち写真撮影は、旧道庁の真正面で起こりやすい。 利用行動を促進する積雪寒冷都市の屋外OSデザインガイドラインとして、次の4点を明らかにした。歩行を促すために、a)1年を通して積雪がない、もしくは少ない歩行経路を確保する。b)最短経路を使ってOSを通過できるように、エントランスを配置する。立止りのうち雪遊びを促すために、c)未圧雪状態を維持しやすい植栽枡や植込のような段差を設け、その脇にa)、b)の歩行経路を確保する。写真撮影を促すために、d)旧道庁のようなランドマークを生かして、その正面を見通せる空間構成にする。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度において本研究のベースとなる日常時における公共空間デザイン・利用行動・屋外環境の関係性を把握することができた。この成果を基本に日常時とイベント時の利用行動の違いに関する調査も進めており、研究は順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究では、札幌市都心部の広場を対象に、日常時における公共空間デザイン・利用行動・屋外環境の関係性を把握することができた。今後の研究では、この成果を基本に以下2点の研究を進める。 ①複合的公共空間デザインと利用行動の関係:積雪寒冷都市冬季の公共空間を対象に、日常時とイベント時の利用行動調査の比較により、建築物・植栽・ファニチャー・仮設物などの複合的公共空間デザインと利用行動の関係を明らかにする。 ②人の意識を惹きつける公共空間デザイン要素:世界的に普及している写真を用いたSNS(Facebook, Instagram, Flickerなど)から、積雪寒冷都市で撮影された写真画像を収集し、公共空間で撮影された写真を抽出する。撮影された対象物の特徴を分析することで、公共空間に対する利用者の意識(都市空間意識)を把握する。a)積雪寒冷都市と温暖都市の比較、b)積雪寒冷都市における季節間の比較、c)積雪寒冷都市冬季の日常時とイベント時の比較、3つの分析結果比較により、積雪寒冷都市冬季において都市空間意識を惹きつける複合的公共空間要素を明らかにする。 ①②で明らかにした積雪寒冷都市冬季における利用行動、都市空間意識と複合的公共空間デザイン関係性より、積雪寒冷都市において冬季の魅力を創出し利用行動を促す複合的公共空間デザインガイドラインを明らかにする。
|