本研究は、積雪寒冷都市特有の冬の利用行動を促進する、冬の魅力を生かした公共空間デザインガイドラインを開発することを目的としている。 2021年度は札幌市赤レンガプラザと大通公園を対象として、ソーシャルネットワーキングサービス(以下SNS)・インスタグラムに投稿されたテキストと写真画像の共起ネットワーク分析により、公共空間の空間構成要素と利用者の空間認識の関係を明らかにした。研究成果として、人が「映える(見映えが良い、綺麗である)」と感じる都市デザインの空間構成として以下3グループ8例を抽出した。 [樹木を含む空間構成]:①落葉広葉樹の並木、②落ち葉が降り積もるオープンスペース(以下、OS)。紅葉した並木や落葉が空間の色彩と関わり、映えると感じやすい。 [OS内及び隣接街区の空間構成]:③視覚体験にバリエーションを与える仮設物群、④ランドマークへの軸線を意識した並木・歩道・仮設物、⑤アート展示やイルミネーション仮設とランドマークを一度に鑑賞できるOS。隣接街区同士の常設空間要素と仮設空間要素が調和した構成は映えると感じやすい。 [遠景までの視界を意識した空間構成]:⑥中・遠景のランドマークと近景の植栽、⑦ランドマーク周辺に広い空を確保した景観、⑧夜空とのコントラストを意識した仮設物。空と植栽やランドマーク、仮設物の相乗効果により、映えると感じやすい。 本研究は研究期間全体を通じて、積雪寒冷都市の公共空間デザインについて、仮設物(装飾、雪氷像等)と常設物(建築物、植栽等)を含めた「複合的公共空間」という視点に立ち、利用行動調査により冬季の屋外環境・複合的公共空間構成要素と利用行動の関係性を明らかにし、SNSデータのテキスト・画像分析により、複合的公共空間構成要素と空間認識の関係性を明らかにすることで、積雪寒冷都市に望ましい冬の魅力を生かす公共空間デザイン方針を明らかにした。
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