研究課題/領域番号 |
19K15160
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
村上 早紀子 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (40803846)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中山間地域 / 過疎地域 / 人口減少 / 高齢化 / コミュニティ / 地方都市 / 交通空白地域 |
研究実績の概要 |
本研究は、地方都市で展開される住民交通を育てる上で、地域拠点との複合的展開の可能性を明らかにするため、一連の運営における連携体制の在り方を検証し、人口減少および高齢化と向き合った地方都市における住民交通の展望を明らかにすることが主たる目的である。現時点では、次の成果が得られた。 第一に「住民交通における運営体制および関係主体の役割の検証」にあたっては、以下の事例の調査から、運営主体となる住民組織の単独でなく、行政や交通事業者等と連携し進めている実態が明らかとなっている。 ①瀬戸市菱野団地コミュニティ交通運行協議会「住民バス」 : 登録を有しない輸送形態の下、三つの自治会の年会費や、行政の補助により運行されている。運行計画等には、住民協議会が積極的に関与している。 ②蒲郡市形原地区支線バス「あじさいくるりんバス」 : 地元自治会が主体となり、運行計画の策定や見直し、利用促進活動に努めており、利用者数の増加に寄与している。 ③恵那市飯地地域自治区運営委員会「いいじ里山バス」 : 導入前に運行されていた移送サービスと比較し、運行経費の抑制に至っている。 第二に「高齢社会と向き合う住民交通の展望」に関して、大韓民国の交通空白地域における交通政策に着目している。韓国では我が国同様に多様な交通政策が進められているが、近年は交通空白地域でも導入されている。当該年度は、忠清南道牙山市「マジュンタクシー(お迎えタクシー)」に関してヒアリング調査を行ったところ、運行開始以降、市の交通政策の予算の削減に寄与している実態が明らかとなった。こうした政策に関して、国も近年、導入を推奨し積極的に支援し始めているようである。類似の取り組みを今後も継続して研究していくことで、我が国の地方都市のように広大な農地を有し、中小規模の集落が分散、人口減少および高齢化が進む地域における交通の在り方を検証していく所存である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、三点の軸を掲げ進めており、「住民交通における運営体制および関係主体の役割の検証」に関しては、事例研究の大半を終えており、実態および課題がおおむね明らかとなってきている。 また、「高齢社会と向き合う住民交通の展望」として、韓国の交通空白地域における交通政策に関しては、韓国内でも先進的とされている事例の調査を終えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本研究で掲げる軸のうち「『交通』と『拠点』の複合的運営の検証」により比重を置いて進めていくが、他に掲げる軸に関しても、並行して引き続き進めていくこととする。 なお進めるにあたり、学会や研究会等から、最新データはじめ研究遂行に必要な資料を得ていく。また、韓国における現地調査およびヒアリング調査に関しては、研究協力者と連携の上、必要データの提供も得ながら、本研究の発展につなげていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度内で予定していた調査が、新型コロナウイルス禍の関連で中止となったことが、次年度使用額が生じた理由である。 次年度、研究計画に従いながら、中止した調査を再開することも含めて適切に使用していく所存である。
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