研究課題/領域番号 |
19K15162
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
井本 佐保里 日本大学, 理工学部, 助教 (40514609)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 移転 / 再配置 / 生業 / 津波被災地 / 漁業集落 / 漁師小屋 |
研究実績の概要 |
本年度は、東日本大震災で被災した岩手県釜石両石地区における生業空間(漁師小屋)の移転、再配置に関する調査を遂行した。両石地区では、他の多くの津波被災地と同様に、防潮堤のかさ上げ、災害危険広域の設定、防災集団移転、漁業集落防災機能強化事業などを組み合わせた復興事業が進められ、約7年間の間、他地域での仮すまいが求められた。 一方、両石には漁業従事者が多く、災害直後から漁場におけるがれきの撤去や、早期の漁業の再開が進められた。現地でのフィールドワークにより、9名の漁業従事者に対し、被災から現在に至るまでの、住まい及び生業の再編に関してインタビュー調査を行うと同時に、現存する漁師小屋の実測調査を行った。 その結果、被災直後から独自に漁師小屋の整備が進められていった事が分かった。初期は、更地となった元自宅敷地にこうした漁師小屋が設置されたが、その後、復興事業による造成工事が始まると、他の場所への移転が求められた。また2014年頃から復興庁より漁業用テントが貸与され、漁港の整備が終わり次第、漁業の中心は漁港へと移っていった。復興事業が完了後は、漁港に加え、自宅敷地、使わなくなった所有地の他、市有地や、他者の私有地への一時的な漁師小屋の設置も見られることが分かった。 以上のように、漁業の早期再開のニーズや、復興事業による影響などにより、移転を繰り返しながら、漁のための空間が地区内に再配置されている状況を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、津波被災地における生業空間の再配置を中心に研究を遂行した。当調査において、現地でのフィールドワークを含め、密度高い調査を行う事ができ、また多くの知見を得ることができた。 一方で、当初予定していた保育施設の災害前後における立地の変化に関する調査については、上記研究を遂行したことで、十分に遂行することができなかった。そのため、研究はやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度遂行することができなかった、保育施設の災害前後における立地の変化(再配置)に関する調査研究を遂行する。具体的には、全国の被災地または被災予測地域における保育施設の移転の実態を把握した上で、移転前後における地域コミュニティとの関係について明らかにする。また、過去2年で蓄積してきた調査結果について、学術論文への投稿を行い、学術的な知見として公表していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定から変更して、津波被災地における生業空間の再配置に関する調査を遂行したことにより、予算額との差額が生じた。次年度、被災地または被災予測地域における保育施設の移転の実態と地域コミュニティとの関係について調査を遂行する上で必要な出張旅費等に使用する予定である。
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