研究課題/領域番号 |
19K15164
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柏原 沙織 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任研究員 (00636384)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 歴史的都市景観 / 変化のマネジメント / ベトナム / ハノイ / 商業 / 歴史地区 |
研究実績の概要 |
今年度は、同業者通りの変化類型の投稿論文執筆、植民地期の統計データを用いた街区単位と変化の様相の関連性を試行的に検証した。また、参考事例としてバンドン市の事例調査を行った。 地区全体の同業者通りの長期的な変化類型に関する論文を執筆してJournal of Cultural Heritage Management and Sustainable Developmentに投稿し、2020年5月6日付で受理され、現在出版手続き中である。既存の規制では位置付けが限定的だった伝統的な同業者集積について、約150年間の変化を吟味して変化の様相を7つに類型化し、今後のマネジメントに向けた資料とした。さらに歴史地区の変化の様相を踏まえて歴史的価値を見直すため、変化を速度と強度の2軸で捉え、保全対象の拡張を提言した。地区内の商業形態の変化の様相を追う手法を提示したことで、既往研究では検討が不十分だった歴史地区における「許容可能な変化の限度」に関する議論を前進させることを目指した。 過年度にハノイ国立公文書館で発掘した植民地期1929・1933・1938年の営業税納付者名簿から、同業者集積の変化の様相を把握し、街区単位との関連性について検討した。変化の様相については、従事者の変化(氏名の変化)と従事職業の変化(同業種、関連業種、異業種と、それぞれの組み合わせ)を掛け合わせて類型化した。Hang Quat通りで分析し、2020年度日本建築学会大会梗概集に投稿・受理された(大会はコロナウイルス感染拡大防止のため中止。梗概受理で発表とみなされる)。 参考事例として、9月にインドネシア・バンドン市の都市商業の実態及び政策動向を調査した。行商・露天商が集積する通りについて、露天商が組合を作り、市政府と共同して望ましい配置・商業活動を模索しており、ハノイの商業政策の進め方にとっても示唆的である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初実施を予定していた所有権・税制関連の情報収集が進まず、3月に渡航・現地調査を予定していたが新型コロナウイルスの影響で中止したため。それに代わり、令和元年度は同業者通りの商業活動の変遷をミクロに追い、物理的要素との関連分析の基礎を固めた。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度後半に、状況を見ながら現地調査を行い、所有権、税制関連の資料収集を進める。並行して現地の研究協力者の協力も仰ぎながら、情報収集を試みる。 地図上で確認できる内容から、旧市街の物理的要素の類型化を進め、令和元年度に行った商業活動の類型化との関連について分析を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、予定していたハノイの現地調査が新型コロナウイルスの影響でなくなったため。書籍購入、執筆中の英語論文のネイティブチェック等に使用したものの、残金が発生した。 残金は令和2年度中に、ハノイ調査の旅費、あるいは資料購入等に充てる予定である。
|
備考 |
Journal of Cultural Heritage Management and Sustainable Developmentの論文は、現在出版手続き中のため、DOIのリンクは出版後に有効化されます。
|