研究課題/領域番号 |
19K15164
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柏原 沙織 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任助教 (00636384)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歴史地区 / 商業地区 / 変化のマネジメント / 歴史的都市景観 |
研究実績の概要 |
本年度は建物単位での業種の変化と景観への影響の内容を明らかにするため、2015ー2020年に収集したデータの分析を進めた。ハノイ旧市街でも変化が特に速いハンブオム通りの125件の店舗・建物を対象に、2015ー2017ー2019年のファサードと業種の変化の関連について、それぞれ変化の強度を点数化し、それらの年度間の変化に応じて変化の速度をスコア化した(各0ー5点)。ファサードの変化は建て替えやリノベーション、上階への構造物の追加などの構造的な変化(2点)、壁面の塗り替えや庇・看板・バナーの変更など表面的な変化(1点)、変化なし(0点)とし、変化が連続した場合には+1点とした。業種の変化は、全く異なる業種への転換を2点(例:カフェから衣料品店)、類似する業種への転換を1点(例:アイスクリーム店からバー)、転換なしを0点とし、ファサードと同様に変化の連続を+1点とした。縦軸にファサードの変化速度スコア、横軸に業種の変化速度スコアを取り、度数を示したバブルチャートを作成したほか、ArcGIS Onlineを用いてスコア別にプロットを行った。 その結果、半数以上が3時点間で業種の変化がなかったものの、そのうちの多くで表面的なファサード変化が多く発生していることがわかった。また、業種が変化した一方でファサードが変化しなかった店舗もあり、これはハンブオム通りの家賃が高く、また競争率の高い立地であることから、外装へのコストを絞る戦略と考えられる。一方で業種もファサードも大きく転換した店舗は建物の建て替えを行っていた。ハノイ旧市街は個人事業主の割合が多く、変化の動向は彼らの意向が大きく反映されることから、今後は業種・ファサードの変化の背景要因について、2018年に実施したインタビュー調査の内容を踏まえて分析を進め、個人事業主の意思決定の観点を考慮した景観誘導の方法を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年に実施したインタビュー調査の内容はベトナム語メインで行われており、その内容の確認を研究協力者に依頼することが遅れたことで、投稿予定だった論文の執筆が遅れているため。
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今後の研究の推進方策 |
2021年5月時点でインタビュー調査の内容確認が進んでいることため、今後、変化スピードの種類の背景に関する分析を急ぎ進め、英文ジャーナルへの投稿を進める。 依然としてコロナ禍の影響でベトナムへの現地調査が難しいため、今後は引き続き現地の研究協力者と連携しながら、入手済みのデータの分析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に当初予定していたベトナムへの現地調査が、新型コロナウイルスの影響が続いたため実施できなかったため。次年度以降に繰り越し、現地調査が可能となった時点で実施する、もしくは海外ジャーナルへの投稿の際にオープンアクセス料に充てることを検討している。
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備考 |
「研究発表」欄の雑誌論文(Journal of Cultural Heritage Management and Sustainable Development)は、昨年度の終わりに採用が決定していたが、今年度中に巻号・ページ数が確定したため、情報を更新したものである。
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