研究課題/領域番号 |
19K15168
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
立花 美緒 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (50740255)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 学校建築 / コモンコア / 海外の学校 / 教育空間 / 共用空間 / 小中学校 / 高等学校 / 施設計画 |
研究実績の概要 |
国内外の学校の核となる共用空間(以下コモンコア)を有する学校建築に関する資料、図面、文献等を収集した。収集したデータや図面の分析を行い、国内の事例調査を実施した。研究実施計画の項目のうち、主に2つの項目「1.コモンコアによる学校全体の面積の削減方法」と「3.コモンコアの物理的環境と児童生徒の自律的な学習と活動」について取り組み、以下の成果があった。 1.コモンコアによる学校全体の面積の削減方法 建築雑誌、書籍、学校、設計事務所等から国内外のコモンコアを有する学校建築のデータ、図面を収集し、機能構成と面積の分析を行った。コモンコアとは別に教室の近傍等に、複数のオープンスペースを有する校舎も多い一方で、平面がコンパクトな校舎を中心に、オープンスペースをコモンコアに集約させる事例があることを把握した。更に、デンマークの公立小中学校であるフォルケスコーレと、普通科高等学校にあたるギムナジウムについて詳細に検討した。コモンコアがラウンジに加え、講堂、図書室、食堂等の機能を兼ねることで、学校全体として面積が過大にならないようにする工夫がなされていることを明らかにした。生徒1人あたりの校舎の面積を検討し、コモンコアを有するデンマークのギムナジウムは、コモンコアを有さない日本の高等学校の建築作品と比較して、大きい値にはなっていないことを確認した。 3.コモンコアの物理的環境と児童生徒の自律的な学習と活動 国内の小学校と中学校に訪問調査を行った。コモンコアは、自主的に学ぶ意欲を育む環境の中心、異学年の生徒や教員が居合わせる場、マルチモードな活動に対応可能な場等として、また、小規模校において賑わいある生徒の拠点として、重視されていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の項目3について、国内訪問調査は予定通り実施した。新型コロナウィルス感染拡大により、海外訪問調査を延期することとなったため、やや遅れている。代わりに、資料収集と図面の分析について、次年度に予定していた作業も含めて、先行させて進めたため、項目1については、当初の計画以上に進展している。また、また同様の理由により、研究補助の学生の雇用を一時的に控える必要に迫られたが、急遽、作業効率を上げるための物品を購入する等して対処した。新型コロナウィルスの感染拡大という予期できない事態に直面したが、本年度は柔軟に対応することができたため、全体としては、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
学校訪問調査については、当初の予定から時期を変更する。新型コロナウィルス感染症の拡大状況と各国の政策を引き続き注視するとともに、受け入れる学校の負担を考慮して、実施時期を決定する必要がある。現時点では、次年度である2年目の後半に再開したいと考えているが、今後の状況によっては、3-4年目にまとめて現地調査を行うこともあり得る。その場合2年目は、文献調査や、図面を中心とした入手可能なデータの分析と考察を、更に進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の拡大により、予定していた海外調査がとりやめになったため、旅費が減額となった。現時点では、海外調査を延期し、旅費として次年度以降に使用することを予定している。今後の新型コロナウィルス感染症の状況により、国内外の学校訪問調査の見通しがたたない状況が続く場合は、文献調査や図面分析等を進めるために、新たに必要となる物品費、論文投稿等のその他の費用に使用する。
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