現在、雰囲気や地域らしさといった都市の質的な側面に対する関心が高まっている。しかしその全体性や複雑性ゆえに、測定や分析の方法論は確立されていない。本研究では、都市の全体的な在り方を「様相」という概念で捉え、街路空間の様相を、心理的側面と物理的側面の両方から、かつ定量的・定性的に解明する。 前年度までに、都市の街路図から半自動的に街路の①幅、②長さ、③方位、④勾配、⑤交差点形状のそれぞれについて、(A)平面的配置を示すグラデーションマップ、(B)分布を示すヒストグラムを作成し、さらにここから、①~⑤の指標を用いて、各都市領域から「代表的街路」を自動的に算出するプログラムを作成した。最終年度にはこのプログラムを改良した上で、国内20都市領域について、解析と、代表的街路の抽出を確定した。 また最終年度には、京都市中心部、京都市西陣、大阪市中心部、大阪市巽という4つの地域の代表的街路各10本において、全方位カメラによる映像撮影を行なった(ようやくコロナ禍が落ち着いたため、最終年度となってしまった)。この映像は、地域の街路の様相をうまく代表するものとなってくれるはずである。今後は映像をヘッドマウントディスプレイで被験者に提示し、感じたことを言葉などで評価してもらう実験を行なうことで、①~⑤の指標と心理的評価との関係を探るとともに、各地域の特徴を明らかにすることができる。 また最終年度には、研究のアウトリーチ活動も積極的に行なった。7月に行なわれた「長岡造形大学建築・環境デザイン学科教員展」という展覧会の作品内、および3月に出版された『街歩きと都市の様相: 空間体験の全体性を読み解く』という書籍内に、本研究の一部を掲載した。
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