研究課題/領域番号 |
19K15175
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
宗政 由桐 早稲田大学, 人間科学学術院, 講師(任期付) (90772690)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 室配置 / ゾーニング / 内壁長 / グラフ理論 / 隣接関係 / 混合整数計画問題 |
研究実績の概要 |
本研究は,複数のプログラムからなる建築物を設計する際に,ゾーニングと室配置という二重で考えなければならない問題を数理的に解決する最適化モデルを提案するものである. 最適化を行うにあたっては,内壁長の最小化問題を取り上げ,室配置を行う際の部屋の形状を整形にするための拘束条件を導入する.また,数値解析例から経験則による設計では導出不可能な事例を示し,本研究の実務設計への応用可能性を示すものである. 室配置導出にあたっては,(i)建物形状は既知である,(ii)室名と要求面積は所与であると仮定し,建物形状をグリッドに分割した状態を考える.さらに無向エッジ(グリッド同士の組合せ)と有向リンク(順列)を導入してグリッド同士の接続性を記述する. 最適なフロアプラン導出の目的関数として,自然な目的にも関わらず,数学的な記述が決して自明ではない内壁長の最小化問題を取り上げた.室形状は同面積であれば一般的には細長い形状よりも正方形に近い方が使い勝手が良いとされており,その場合は内壁長が小さくなる傾向にあることも自明であるためである. 混合整数計画問題を援用することで数理最適化モデルを構築し,実際に数値解析例として導出された解は,建築家の経験則から導かれるフロアプランとは異なっていたが,内壁長は最小化されており,構築された数理モデルの有効性が検証されたと考えられる. 本研究の手法により,ゾーニングと部屋の結びつきを同時に考慮する室配置の数理最適化モデルの構築が可能となり,設計手法への展開が期待される.各部屋をつなぐ廊下の導入,複数階における縦動線を考慮した室配置への展開,敷地と建物形状の関係によるエントランス部の指定などといった数理最適化モデルの展開を今後の課題としたい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は,ゾーニングと室配置を同時に満たす数理最適化モデルの構築について研究を遂行した.これらの成果は,査読付国際会議であるInternational Symposium on Scheduling 2019に採択されたほか,国内の学会においても発表を行っている.以上の研究推進は,年度当初に想定し得た研究計画を大きく上回るものであり,順調に研究が展開されているものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
4ヵ年計画の2年目となる2020年度も,研究計画に沿って,適切な数理最適化モデルの構築のための諸条件の整理を行う.今年度に構築した,所与の建物形状における最適化にとどまらず,建物形状の提案や入口・出口を考慮したモデルとして,より実践へ近づくよう,示唆に富む知見の獲得を目指す.得られた成果の学会報告・論文投稿も積極的に行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議への旅費として申請をしていたが,本年度は持ち回りの国際会議が国内で開催されたため,旅費・宿泊費等が当初の計画よりも大幅に減少した. 2020年度は本年度よりも研究成果を発表する予定であるため,研究発表その他の費用に使用する予定である.
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