研究課題/領域番号 |
19K15179
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小松 萌 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (80822139)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 都市農業 / 都市農地 / 地域関与 / 存続 / 都市農業関連制度 |
研究実績の概要 |
今年度の本研究における研究成果は主に、1.視座の整理と2.事例整理と対象地選定である。まず1.視座の整理では、都市計画法制定以降の都市農業・都市農地に関する学術雑誌のレビューを通して、都市農地の都市計画上の位置づけや期待された役割を時代ごとに整理した。また、関連制度の施行や改正に伴う学術雑誌での議論の焦点を整理した。その結果、議論の焦点はa.税制に関するもの、b.都市計画法や制度に関するもの、c.農地保全の手法に関するものの3つに分類することができた。さらに、これらの議論から都市農業・都市農地の問題点を抽出したところ、問題点は、(1)農業従事者の高齢化や税金など所有者自身の問題、(2)農地そのものの消失、(3)農地消失による都市や住環境への影響の3つのフェーズに分類することができた。 次に2.事例整理に関して、研究実施計画では、世田谷区烏山地域を研究対象地として想定していたが、1.視座の整理を踏まえ、本研究を推進するにあたっては、都市化の中で存続してきた農家所有の農地における都市農と、建築や居住環境とともに計画された都市農の双方を調査、分析する必要があると考えた。そこで、後者の対象を選定するために、三大都市圏特定市内の事例を収集し、開設主体や形態、農地の取得方法、農の提供形態、担い手について調査し整理した。その結果、都市農が地域協働の場として機能している特徴的な事例を2つ抽出することができた。この2つの事例では、耕作以外にも福祉施設や国際交流事業などを展開しており、「市民による地域関与」を評価軸として設定した。他方、世田谷区烏山地域に関しては「都市の中での存続」を評価軸として設定し、農地の空間形態の変容実態を明らかにし、論文にまとめた。今後、世田谷区烏山地域と抽出した事例を詳細な調査・研究の対象とするとともに、引き続き対象事例の抽出を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初から「新たな都市農のあり方」とは、「生産的営みとそれを支えるコモンズ」であるとしていたが、農地における耕作とそれに伴う作物生産に都市農の価値の重きを置いていた。しかしながら、本年度の研究を通して、現代の都市農のあり方として本研究でより着目すべきは、耕作という行為の存在によって生じる地域交流や地域協働なのではないかと考えた。「生産的営みとそれを支えるコモンズ」という概念をより慎重に捉え直す必要があったが、視座の整理や事例調査と整理を経て、研究実施計画通りに評価軸の設定、対象地の選定までを完了することができたので、研究は概ね順調に進展している、と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は特に、実地調査や資料分析によって、選定した研究対象の空間・社会的要素の実態と都市農の質との関係を明らかにする。評価軸として設定した「地域関与」に関しては、その定量的・質的分析手法を検討する必要があるが、既往研究や文献を参考に対応したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
地図資料の多くを図書館での複写によって入手することができたことや、事業者のご厚意等により、当初の予定よりも資料代や謝金の支出が少なかった。一方で、PCの故障により、論文執筆及びデータ分析を継続するために予定外の物品を購入した。以上より、結果的に7,600円の次年度使用額が発生した。2020年度は新型コロナ感染拡大防止により図書館での資料収集に制限があるため、インターネットでの購入のための不足分を補うために使用することを計画している。
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