本研究では、温暖地域の居住文化の継承・発展に寄与する環境配慮住宅として、中間領域の対応可能性に着目した上で、中間領域の有効な計画手法を明らかにすることを目的としている。2021年度においては、中間領域を有する住宅を対象とした住まい方に関する以下の2つの調査を実施した。 ①土間付き住宅における住まい方の分析:土間空間を有するリノベーションが行われた京都府・堀川団地を対象として、入居者の住まい方に関するアンケート調査を実施した。18世帯の住まい方を分析した結果、土間空間では「仕事」や「接客」といった行為が主に行われており、土間空間は「社会」と「住宅」をつなぐ役割を果たしていることを明らかにした。また、土間空間における履物についても入居者によって様々な選択が見られ、履物の選択によっても様々なライフスタイルに対応できていることを明らかにした。 ②京町家における環境調整行動の分析:縁側・土間といった中間領域を有する京町家を対象とした住まい方に関する調査を実施した。夏期から冬期にかけての温熱環境と環境調節行動を調査し、季節変化にどのように対応しているかを分析した。居住者による環境調節行動として最も多かった行為が建具の開閉であった。さらに、建具の開閉と温熱環境を照らし合わせることで、建具の開閉がどのように室内温熱環境に影響しているかを明らかにした。また環境調節行動は、主に夏期から中間期にかけて積極的に行われており、冬期については暖房使用による対応が中心であった。以上から、中間領域を有する住宅において環境調節行動が有効な季節は夏期から中間期にかけてであることが確認されたと言える。
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