本研究の目的は、岐阜県北部における大規模な別荘地の実態を明らかにすることである。調査および分析に際しては、開発的要素(開発開始時期、別荘地範囲、別荘地面積、建物数、建物密度、建物の投影面積)、地形的要素(標高、傾斜角度、傾斜方向)、自然的要素(植生調査による植生区分)のそれぞれに着目した。そして、それらの要素を踏まえ、別荘地を類型化することで、各別荘地がそれぞれどういった特徴を持つのかを示す事が、研究の大きな流れである。 2021年度までに、別荘地の立地や規模、建物数などの情報を、地図データ上に落とし込み、分析を進めるための準備を進めてきた。得られた別荘地の規模などを考慮し、研究対象として20件を選定した。2022年度には別荘地面積、建物数、建物密度、投影面積、傾斜角、標高、という6つの項目を用いた類型化を行った。また、別荘地の空間や景観に影響を与えると考えられる要素として、環境省生物多様性センターによる植生調査の結果を、別荘地ごとに集計し直した。そして、別荘地ごとの植生の構成比を用いた類型化を行った。 研究期間全体を通して、岐阜県北部には別荘地面積が100haを超える大規模な別荘地が複数存在することや、別荘地の面積に対して建物数が少ない別荘地があることを、具体的に明らかにした。植生に関しては、落葉広葉樹の割合が高い別荘地の数が多いことが分かった。また、類型化に関しては、開発的要素と地形的要素からなる類型と、植生による類型とを組み合わせる方法を示した。その方法によって、対象とする20件の別荘地は、最終的には9つのカテゴリーに分類された。 これまで、岐阜県北部において大規模な別荘地が存在するということが漠然とは知られていながらも、その全体像や各別荘地の特徴は具体的には示されてこなかった。それらの基礎的な事柄を明らかにできたことが、本研究の成果である。
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