研究課題/領域番号 |
19K15198
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研究機関 | 日本大学短期大学部 |
研究代表者 |
石田 優 日本大学短期大学部, その他部局等, 助手 (40822309)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン / パウル・エンゲルマン / 実測調査 / 3DCG / 左右対称性 / 平面計画 / スケッチ |
研究実績の概要 |
哲学者ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタインが建築家として設計に関わった「ストンボロー邸(Stonborough Villa, 1926-1928)」は、当初は建築家パウル・エンゲルマンにヴィトゲンシュタインの姉マルガレーテ・ストンボローが設計の依頼をしたところからはじまる。そして、ヴィトゲンシュタインが設計の途中段階から加わったことで、最終的にストンボロー邸は完成することとなる。そうした背景からストンボロー邸は、エンゲルマンとヴィトゲンシュタイン両者の建築理論が内在していると考えられる。本研究は、両設計者エンゲルマンとヴィトゲンシュタインの建築理論における共通性を導き出すことを目的としている。 初年度における研究は、第一に、現地でストンボロー邸(現ブルガリア文化研究所)の実測調査を実施した。また、ウィーン建築センター(Architekturzentrum Wien)でエンゲルマンに関する文献資料の収集を実施した。これにより、エンゲルマンの建築活動、エンゲルマンにおけるストンボロー邸の位置付け、エンゲルマンの建築作品について、整理の作業を終えている。しかしながら、ストンボロー邸全体におよぶ造形的特徴を抽出するため、これまでの実測調査を継続して実施する必要性があったが、予定していた調査よりやや遅れが生じている。この点においては、研究協力者と令和二年度の研究計画の再構築について討論を終えている。次に、エンゲルマンのストンボロー邸最初の平面図に至るまでのスケッチのデータ化および変遷過程の分析を行なった。また詳細な3DCGによる分析については、次年度以降も継続して取り組むこととしたい。 以上、これらの研究成果の一部は、令和二年度の日本建築学会大会(関東)での口頭発表を予定している。また順次、学会で発表する予定で準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、以下の三点から研究を遂行した。 1)ストンボロー邸の設計に関わった哲学者ヴィトゲンシュタインと建築家エンゲルマンが論じている建築および装飾に関する言説の抽出を行った(作業継続中)。 2)現地で研究協力者の承諾のもと実測調査を実施する予定であったが、調査時間の制限を受けたため十分な調査の作業時間を確保することが困難となった。しかしながら、現地で建築家エンゲルマンに関する十分な資料を得られ、ストンボロー邸以外のエンゲルマンの建築作品の分析を行った。 3)建築家エンゲルマンのスケッチの3DCGによる復元および変遷過程の分析として、各平面スケッチに計画されている部屋の配置、開口部の位置等の建築の構成要素の抽出を行った(作業継続中)。 以上により、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、継続してスケッチの3DCG化の作業を遂行し、3次元パースを通して各構成要素の変遷過程による比較分析を行う。これにより、エンゲルマンのスケッチの変遷過程に共通する建築理論の抽出が可能となる。また並行して、現地での実測調査を実施し、ストンボロー邸の地階、二階、三階の実測調査に基づいた図面化を試みる。特にこの建築の特徴的なドアのディテールの寸法情報を図面として補完作業を行う。この作業により、ストンボロー邸を対象とした建築学的な研究を行うための研究基盤の構築がなされ、ヴィトゲンシュタインの建築理論の解読の発展が想定される。この結果より、ストンボロー邸に内在するエンゲルマンおよびヴィトゲンシュタインの建築理論の共通性について分析・考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究における重要な用途として、オーストリア(ウィーン)までの渡航費が挙げられる。次に重要な用途としては、図面資料の分析にかかる諸費用である。そのうち、初年度は研究を遂行する上で必要な3次元CADソフトの作業環境を整備しており、本格的な分析作業は次年度から開始される。したがって次年度には、分析データの結果を保存するため外部メモリ(ハードディスクドライブ)の消耗品費が必要となる。本年度は、これらの作業が発生しなかったことより、次年度使用額が生じている。
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