研究課題/領域番号 |
19K15203
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤田 昂志 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (80774471)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 火星 / 宇宙探査 / 飛行機 / アクチュエータ / 高電圧 / 空力 / エラストマ |
研究実績の概要 |
誘電エラストマアクチュエータは,シリコンゴムなどの膜状エラストマの両面に,炭素粉末などの柔軟電極を設置し,数kVの高電圧をかけることで,エラストマが静電気力で変形することを用いた,比較的新しいアクチュエータである.軽量である,効率が高い,などの利点を有している.申請者らは火星探査の新たな手段として,飛行機の利用を提案している.空気の希薄な火星大気中で飛行するには,高い空力特性のほかにも収納性,突風耐性などが求められる.本研究では,柔軟で折りたたみ可能な誘電エラストマを用いた能動制御可能な翼を実現することで,ミッション能力の高い火星探査航空機を生み出そうとしている. 今年度は,誘電エラストマアクチュエータの試作,および柔軟膜を貼り付けた薄翼の受動変形の空力的効果に関する実験を実施した. 誘電エラストマアクチュエータの試作では,先行研究を参考に,高圧電源,高圧計測装置,エラストマ,炭素粉末等を準備し,電極直径30mmのアクチュエータを製作した.製作したアクチュエータが電圧に対応して駆動する様子が定性的に確認できた. 本研究課題では,柔軟膜翼を誘電エラストマアクチュエータで駆動することによる空力特性の向上を目指している.それに先立ち,今年度はまず誘電エラストマアクチュエータのない柔軟膜翼単体での空力特性を取得した.翼型は,火星飛行機の翼型の候補として考えられている石井翼,および小型無人航空機で採用実績のある反転キャンバ翼とした.3Dプリンタで製作した骨組みに対し,ゴム薄膜を巻き付けて翼模型とした.空気力による受動的な変形によって空力特性が変化することが確認できた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では,2019年度に実施を予定していたのは,(1)柔軟膜翼の受動的特性の調査,および,(2)誘電エラストマアクチュエータの製作法の確立および基礎特性試験,である. (1)については,石井翼および反転キャンバ翼について調査できた.ただし,基本翼形状の一つである平板翼に対しては未実施となってしまったので,2020年度にデータを取得する予定である. (2)については,設備が一通りそろい,アクチュエータを自ら製作することができるようになった.ただし,基礎特性の定量的な評価は一部未実施であるため,こちらも2020年度にデータを取得する予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度は,2019年度に間に合わなかった誘電エラストマの基礎特性試験を実施する.また,同じく間に合わなかった柔軟膜を貼り付けた平板の空力特性については,2020年度に実施する誘電エラストマアクチュエータを搭載した柔軟膜付き平板翼の試験において,電圧0Vの無駆動状態として同時に計測することとする. 当初計画では,誘電エラストマアクチュエータのプリンタ式製造法を2020年度に開発することとしていた.しかし,2019年度に実際に誘電エラストマアクチュエータを試作してみた結果,プリンタ状に炭素粉末を精密に吹き付けるよりも,膜側に適切な切り抜き形状のマスクシートを貼っておき,そこに炭素粉末を付ける方が簡単かつ汎用性が高いことが分かった.そのため,プリンタヘッド付きXY自動送りステージではなく,レーザカッターを購入することとする.
|