本研究は誘電エラストマアクチュエータというデバイスを用い,膜状の薄翼の形状を変化させて空力特性を制御することを目指している.本年度に実施したことは,①誘電エラストマアクチュエータの基礎特性試験設備の構築と特性取得,②誘電エラストマアクチュエータを適用した膜翼の風洞試験,の2点である. 誘電エラストマアクチュエータの特性試験設備の構築では,引張試験装置,面積ひずみ計測装置,静電容量計測装置,の3つを製作した.これにより,自作した誘電エラストマアクチュエータの物理的な特性を定量的に評価することができるようになった.また,粘弾性などいくつかの追加すべき課題があることが明らかになった. 誘電エラストマアクチュエータを適用した膜翼の風洞試験では,翼模型を製作し低速風洞に設置して,その空力特性および変形形状を種々のアクチュエータ駆動条件で計測した.翼模型の寸法は,翼弦長100mm,翼幅200mm,アスペクト比2の矩形翼である.この翼模型は,縁以外をくり抜いたステンレスの枠に対してアクリル系のエラストマシートを予ひずみ100%の状態で貼り付けており,両面に炭素粉末を塗り付けて電極を設けている.このアクチュエータは数kVの高電圧で駆動するため,専用の高圧電源を用意している.風速7.7m/s,レイノルズ数5万の気流中にて,電圧無印加状態と5kV印加状態のそれぞれについて,空力特性を天秤で取得し,また変形形状をレーザ変位計とトラバース装置で計測した.今回の試験では変形が想定よりも小さく,そのため空力係数の変化が小さかった.今後の改良に向けた課題を抽出することができた.
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