本研究は誘電エラストマアクチュエータというデバイスを用い,膜状の薄翼の形状を変化させて空力特性を制御することを目指しており,以下のことを実施した. 使用しているエラストマ材料は,ひずみを与えた際に,時間の経過とともに徐々に応力が減少する特性を持っていることがわかった.試験の結果,使用しているエラストマ材料は,ひずみ印加から6日以上経過後に,応力がひずみ印加開始時のおよそ1/3に収束するということが明らかになった. 昨年度に構築した面積ひずみ計測装置を用いて,種々の条件における誘電エラストマアクチュエータの変形特性を計測した.ここでパラメータは,膜厚,予ひずみ,印加電圧,電極面積,の4つとした.結果,(1)ひずみを与えた後の膜厚が薄いほど電圧による変形が大きい,(2)ひずみを与える前の膜厚が厚いほど絶縁耐力が高い,(3)電極面積が小さいほど面積ひずみは大きい,という知見が得られた. 変形する膜形状を三次元的に動的に計測するため,ステレオカメラの原理を用いた画像変位計測システムを構築した.2台の高速度カメラを使用することで,0.1mm程度の解像度で5kHzの周波数で3次元的に形状を計測できた.これを用いて,通風中の膜翼の変形挙動を計測した. 昨年度の試験ではアクチュエータによる変形量が小さかった.この原因は膜に与えておく張力が過大だったためであると考えられた.そのため,膜の張力を下げた試験を実施した.その結果,無風状態でキャンバ無しの膜翼に対し,通風状態で最大で翼弦長の15%程度のキャンバが得られ,また電圧印加の有無によって10%程度のキャンバ変化が得られた.ただし,電圧印加前の時点でキャンバが大きすぎるために,電圧印加による揚力係数変化はわずかだった.そのため今後は,電圧印加前も印加後も適切なキャンバとなるような翼システムのパラメータチューニングが必要であると言える.
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