研究課題/領域番号 |
19K15205
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
阿部 圭晃 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (40785010)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 高次精度非構造スキーム / CFD / 複雑形状 / 流束再構築法 / 流体力学 |
研究実績の概要 |
今年度は,非構造高次精度法の一種である流束再構築法(Flux Reconstruction 法:FR 法)に基づく圧縮性流体ソルバーを用いたGNLG(Gulfstream G550 Nose Landing Gear:航空機着陸脚)周りの非定常乱流解析において,従来の安定化法(overintegrationによるdealias処理)が空間5次精度の離散化において十分に有効でなく,既存の安定化法だけではGNLGクラスの複雑形状周りの流れ場を安定に解き進めることは難しいと分かった.また同時に,曲がった形状を精度良く再現する空間メッシュの問題もあり, 特に四面体高次要素と六面体高次要素を繋ぐピラミッド型の要素において底面が曲線で構成されたセルにおける一様流保持の問題があることが判明した.これらは一般的な非構造高次精度法において未だ未解決の課題であり,次年度取り組むことを計画している. さらに,当初の計画を前倒しして現在のFR法ソルバーを新しい計算アーキテクチャの一種であるベクトルマシン(NEC SX-Aurora)に適合するよう改変を試みた. SX-Aurora上での実行が可能であることと,同アーキテクチャの特徴である高いメモリバンド幅を生かした解析が可能であることを実証し,FR法に基づく圧縮性流体解析をベクトルマシンで実行した世界初の結果を得た.現在,さらに大規模な並列化計算を目指しプログラムの拡張を進めており,また他の計算機(GPU,CPU)との比較を同じ流体ソルバーを用いて行う基盤を構築することが出来た.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で,既存のFR法を用いた複雑形状周りの解析の限界とその問題点が明らかとなり,また当初の予定を前倒しして流体ソルバーの新たな計算機への適応に向けた拡張を行った. 計算安定性の観点では,どのような計算条件で不安定性が発生するかを特定した.また複雑形状の高次メッシュを作成する際に必要な要素において基本的な一様流保持誤差の問題があることが分かり,次年度の研究において取り組むべき問題を具体化出来た.さらに,ベクトル機におけるFR法を用いた圧縮性流体ソルバーの実装はこれまで行われた例がなく,同分野の専門家と共に取り組むことで初めて可能となった. これまでは,異なる計算アーキテクチャでの流体ソルバーの性能比較は,異なるソルバー(各アーキテクチャに特化したプログラム)に基づき行われることが殆どであった.今回構築したソルバーは,GPU,CPU,MICに加え新たにベクトル機(NEC SX-Aurora)での実行が可能となり,高次精度非構造法における各アーキテクチャの有効性比較を統一的に行うことが出来るようになり,これらの理由からおおむね研究は順調に進展していると判断する.
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は,運動エネルギー保存に基づく計算安定化を高次精度非構造法(FR法)に基づく現ソルバーに実装し,その有効性の検証へと進む.また,FR法ソルバーにおけるベクトル機の性能評価を行い,一般的な高次精度非構造法とベクトル機の組み合わせに際し性能向上のための知見を取得する. 現ソルバーは他にもCPU,GPU,MICでの実行が可能であることから,異なる計算機間で現在のFR法に代表される非構造スキームの高速化にどの程度の差があるか,またそれぞれの計算機における適切な実装がどのようなものかを評価し,単一のソルバーに基づく一貫性のある知見取得に繋げる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は主に新しい計算機システムへの本計算手法の適用等,プログラムの実装面がスムーズに進んだため,大規模計算を行う想定で導入を予定していた機器の一部を次年度以降に見送ることとし,代わりに研究実行のための人件費を計上した.そのため,今年度の総額として当初想定よりも少ない支出となった. 次年度使用額によって当該設備の導入を次年度検討しているが,もし同等の性能を他の計算機システムで代用可能であると判断した場合には計算機使用料として計上することを想定している.
|