研究課題
人工衛星を小型化することで、開発および試験のターンアラウンドが短くなること、ならびに、軌道投入に要するロケットの打ち上げ能力が小さくて済むことから、ミッションの内容によっては、比較的小さい時間的・経済的コストによりその達成が可能であることから、近年では小型の衛星の活用が活発化しており、より高度なミッションの実現が多数検討されている。高度化の1つの方向性として、衛星の機動性(航行する軌道を変化させる能力)の向上は重要である。このような背景の下、本研究では、既存の工学機器で利用されている燃焼形態(デフラグレーション)とは明確に異なる燃焼方式であるデトネーション(爆轟)という現象を理解し、応用することによって、簡素なシステムと高い推進性能を両立した小型ロケットエンジンシステムの実現に資することを目指している。本年度(2020年度)は、従来の二重円筒形状の燃焼室を有する回転デトネーションエンジン(RDE)と比較して、より小型で簡素な単円筒形状の燃焼室を有するRDEについて、燃焼室流路を緩やかに拡大し燃焼試験を実施した。この結果、デトネーションによる素早い燃焼完結に起因して、拡大流路中での推進剤閉塞を達成し、超音速で排気することが可能となることが明らかとなった。これにより、燃焼器と加速ノズルを一体として、エンジン長さを短縮する可能性が示唆された。また、関連する研究との相乗効果により、デトネーション燃焼に特有なセル不安定性に起因する、希薄波影響下のデトネーション波の伝播特性、ならびに、宇宙で実用可能な推進器の「システム」としての考慮事事項、高温流体を透過して壁面の熱放射を感知する放射温度計測の光学系構築に関わる考慮事項についても多数の知見が得られた。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要の欄で述べた通り、研究により着実に知見が蓄積されているため。
次年度(2021年度)は、今年度(2020年度)の研究により検討が進んだ、デトネーション波伝播機構、システムとしてのデトネーションエンジン、光学計測系設計の知見に基づき、燃焼とエンジン熱負荷に関する検討を進める。
関連研究の進捗により、エンジン小型化の新たな方向性、ならびに、熱放射計測の新たな考慮事項が示唆されたことから、実験装置製作の計画を見直しため。次年度使用分は、この実験装置製作に当てる計画である。
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Proceedings of the Combustion Institute
巻: 38 ページ: 3605~3613
10.1016/j.proci.2020.06.371
巻: 38 ページ: 3759~3768
10.1016/j.proci.2020.08.001