研究実績の概要 |
地球に衝突する恐れのある小惑星に対して,その軌道変更,ひいては地球衝突を回避する手法に関する研究である.初年度は,宇宙機を小惑星に衝突させる軌道変更手法であるKinetic Impactor(KI)の軌道最適化に関する研究を主に行った.まず,申請者が2018年に発表した独自のKI評価指標であるImpact-Geometry Mapを発展させ,KIによる小惑星の軌道エネルギー変化を最大化する宇宙機の軌道制御則を提案した.また,制御則を発展させた軌道最適化システムを開発した.架空小惑星へのKIミッション設計の結果,軌道変更効果が従来手法と比較して増大することを示した.本成果は,申請者が筆頭著者として学術誌に投稿・掲載された(K. Yamaguchi et al., Journal of Guidance, Control, and Dynamics, 2020).また,国際会議での発表も行った(K. Yamaguchiet al., SciTech2020, Orlando, US). 次に,KIの推進システムとして,宇宙環境由来の自然力である太陽風動圧を用いる可能性を検討した. 太陽風は,太陽から吹き出す高速のプラズマ流である.申請者は,宇宙機から高電位の導電性テザーを展開し,太陽風を受け止めて推力を得る帯電セイルの,KIの推進システムとしての可能性を探った.まず,太陽風とテザーが干渉し,運用中に変形する効果を考慮した新しい推力モデルを提案した.また,モデルを軌道計算コードに組み込み,ItokawaやRyuguといった小惑星への接近が現実的な時間で可能であり,帯電セイルのKIへの利用の可能性を示した.本成果は,申請者が筆頭著者の論文として掲載済みである(K. Yamaguchi, et al., Acta Astronautica, 2019).本年度の成果は,以上である.
|