研究課題
今年度は,忠実度の高い不確定性を考慮した確率的軌道最適化手法を実現する上で実用的な課題となる計算の高速化に関する検討を進めた.特にJulia言語を用いたCPU/GPUを用いた超並列計算に関する検討を行い,軌道設計の高速化に成功した.また,昨年度研究を行ったサロゲートモデルを用いた軌道設計研究を発展させた深宇宙コンステレーションの軌道設計を行い,恒星間天体や地球近傍小惑星の統計モデルを用いた即応型フライバイ探査の軌道設計を行い,IAA Planetary Defense Conferenceの口頭発表に採択されている.また,今年度は,本研究のアプリケーションの一つであるDESTINY+ミッションの軌道設計に関する詳細検討を遂行した.DESTINY+は地球周回軌道に打ち上げられ,イオンエンジンを用いて深宇宙離脱する世界初のミッションとなる.そのようなミッションを実現するために,「ひてん」等で用いられた月スイングバイ,「はやぶさ」等で用いられたイオンエンジンを駆使した軌道設計が採用されている.特に,打ち上げてから最初の月スイングバイを迎えるまでの期間(=スパイラル軌道上昇フェーズ)は,約1.5年間ほとんど連続的にイオンエンジンを動作させた後,然るべき時刻・位置・速度で月スイングバイを行う必要があるため,不確定性に対するロバストな軌道設計が求められる.本年度の検討では,DESTINY+のスパイラル軌道設計に適用可能な微分動的計画法(Differential Dynamic Programming: DDP)の実装と高速化に関する検討を行った.今後の検討で,DDPを用いた,ロバストかつ最適な軌道設計に関する検討を進める予定である.DESTINY+の軌道設計に関する研究成果は,当該分野で権威的であるActa Astronauticaに出版されている.
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Acta Astronautica
巻: 196 ページ: 42~56
10.1016/j.actaastro.2022.03.029
Journal of Guidance, Control, and Dynamics
巻: 45 ページ: 1496~1511
10.2514/1.G006487