研究課題/領域番号 |
19K15216
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
津島 夏輝 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (20815948)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メカニカルメタマテリアル / モーフィング翼 / 空力弾性 / マルチスケール解析 / パンタグラフ構造 / 積層造形技術 / 熱可塑プラスチック / 航空構造 |
研究実績の概要 |
従来材料では実現不可能な超高性能でエキゾチックな特性を持ち、高自由度な多機能材料として、航空宇宙構造物の革新的な性能向上が期待されているメカニカルメタマテリアルについて、本研究では、特に異なる微視構造を持つパンタグラフ型メカニカルメタマテリアルがマクロな構造応答に与える影響を調査するため、パンタグラフ構造のマクロな構造応答と空力特性を評価できる非線形マルチスケール空力弾性解析手法の確立・検証に取り組んでいる。具体的には、申請者が独自開発した超異方性構造の非線形空力弾性解析技術を発展させ、メカニカルメタマテリアルの微視的・形態的特質を正確に踏まえた均質化法を統合する事で、異なる特質を持つ微視構造から構成される人工材料を適用して構築した巨視的な構造応答を予測できる非線形マルチスケール解析手法の開発を進めている。また,モーフィング航空機への適用を例に、パンタグラフ型メカニカルメタマテリアルを航空宇宙構造へ適用した際の構造特性に着目し、その妥当性検証と精度・効率の評価も目指している。 メカニカルメタマテリアルは複雑なミクロ・メソスケール構造を有するため、複雑な構造も安価に作製ができる積層造形技術を活用した造形を検討しているが、ここまでの研究により、構造試験と実験計画法に基づく因子分析により造形変数が積層造形の機械特性に与える影響を定量化し、航空構造として活用した際の表面粗さ(空力特性への影響)を評価し,航空構造として最低限必要な精度が実現できる事が確認された。また、パンタグラフ構造により、軽量性・柔軟性・異方性を兼ね備えた特殊構造を実現できる事が確認された。さらに、空力弾性解析により、最適化したパンタグラフ構造をモーフィング構造へと統合することで、空力荷重下においても、翼のキャンバー変形が実現できる上、高揚力効果が期待できる事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、初年度においてパンタグラフ型メカニカルメタマテリアルの試作と実験的機械特性評価、並びに詳細有限要素解析モデルの作成と解析的評価を進める予定であった。それに対して、上記の実験・解析的パンタグラフ構造の評価が完了しており、さらに予定していたモーフィング構造への統合と試作にも先行着手して、その性能評価を実施している。また、開発を目指しているマルチスケール空力弾性解析手法に関しても、実験的なデータを活用した均質化モデルの導入が完了している。 このため、現在の研究進捗状況は、当初の計画以上に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、基礎的なパンタグラフ構造の構造特性評価が実施できているため、今後は設計変数を増やして異なる微視構造における構造特性の変化を評価する。さらに、マルチスケール空力弾性解析手法に関して、実験的なデータによる均質化モデルのみならず、数値解析的な均質化手法の検討を進める。これについては、当初の計画では主にPiolaの均質化手法の活用を検討していたが、将来的にパンタグラフ構造以外の様々なメカニカルメタマテリアルの評価も可能な汎用性の高い手法として、数値解析的なマルチスケール均質化解析手法の検討を進める。さらに、実験値との比較による解析手法の妥当性検証も実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
三月に予定されていたいくつかの出張や実験のための物品購入がコロナウイルス対策のため、中止または延期となりました。そのため、次年度に外出自粛が緩和されてから、学会参加及び延期された試験の物品購入に使用する予定です。
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