研究課題/領域番号 |
19K15217
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
庄司 烈 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (20833172)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 燃焼振動 / 希薄予混合燃焼 / 遷移現象 / 水素 / メタン / 光学計測 / モード解析 / 環状燃焼器 |
研究実績の概要 |
令和元年度に得られた成果は大きく分けて以下の二項目である。 (1)弱旋回燃焼器における希薄予混合水素・メタン火炎の光学計測試験 圧力変動、OH*自発光強度(高速度カメラによる画像計測)、二次元流速場(PIV)を10kHzの高時間分解能で同時に計測可能なシステムを構築した。本システムをもとに、異なる2種類の長さを持つ石英管を燃焼器の壁面としてそれぞれ使用することで、異なる燃焼振動モードの発生時における圧力や火炎、流れ場の時系列的な挙動を可視化した。その結果、メタン火炎では長い管を使用した時、水素火炎では短い管を使用した時に、もう一方の石英管を使用した時と比較して、燃焼振動発生下でより大きな圧力変動が得られた。また、短い管内における燃焼振動下における水素火炎に関して次の三つの性質を確認した:(I)大きいスケールの渦を伴う半径方向に平らな形状を持つ火炎が見られる、(II)燃焼器入口の平均速度分布がトップハット形状になる、(III)燃焼振動の一周期の間に、燃焼器入口において膨張流と収縮流が入れ替わる。これらは全て弱旋回流としては非典型的であり、また先行研究で未発表の新しい発見である。 (2)小型環状燃焼器の設計 Poinsotらの先行研究で得られた知見を基に、一次元熱音響解析を行う計算コードを作成した。本コードによって、他の先行研究の実験結果を比較的精度良く再現できることを確認した。また本コードを使用して、本研究で設計する燃焼器において発生する可能性がある周方向モード燃焼振動の周波数や振動の増幅率などが、様々な入力値(燃焼器の寸法、燃料ノズルの個数、燃料の種類など)に対してどう変化するかを調査した。このパラメトリックスタディの結果をもとに、燃焼器の形状や寸法等の設計を概ね完了させた。 上記以外にも、小型環状燃焼器の製作後に実施する試験で得られるデータを解析するための計算コードの作成も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度に計画していた弱旋回燃焼器を用いた光学計測試験を実施した(研究実績の概要(1)に対応)。その成果に関して、国内での学会発表を行ったほか、国際的に権威ある学会での発表が二件決定しており、当初の計画以上に順調に進展している。小型環状燃焼器に関しては、先行研究を活用した熱音響解析により、燃焼器の設計が、燃焼器内で発生しうる燃焼振動の特性に及ぼす影響を調査するパラメトリックスタディを実施することができた(研究実績の概要(2)に対応)。試験供試体の製作完了には至らなかったものの、上記のパラメトリックスタディに加えて、光学計測システムの構築や、製作後に実施する実験で得られるデータを解析するコードの作成まで完了しているため、令和二年度に燃焼器の製作が完了次第、ただちに実験を実施する体制を構築できている。以上より、本研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画通りの進捗状況であるため、今後も当初の研究計画通りに研究を進める。まず、今年度の熱音響解析の結果をもとに、小型環状燃焼器の設計・製作を早期に完了させる。燃焼器の製作が完了次第、周方向に複数設置する予定の圧力センサーによる圧力変動と、高速度カメラとイメージインテンシファイアを使用したOH*自発光画像の同時計測試験を開始する。これにより、周方向モードの燃焼振動の周波数や振動周波数における圧力振幅、火炎からの発熱率変動等を捉え、燃焼振動発生時における熱音響カップリングの特性や火炎の挙動を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度内に製作予定であった小型環状燃焼器の製作を完了することができなかったため、その製作費分が次年度使用額となった。本使用額については計画通り令和二年度に製作費として使用し、小型環状燃料器の製作を行う予定である。
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