研究課題/領域番号 |
19K15218
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
飯田 隆人 大阪大学, 工学研究科, 助教 (50837573)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 粒子法 / 氷海工学 |
研究実績の概要 |
本研究では流体-氷-船舶の連成解析手法を開発し、船舶に働く力を正確に推定することで今後起こりうる事故を未然に防ぐことを目的とする。そのために本研究では特に粒子法に着目し、開発を行っている。 初年度の研究計画では、そもそも粒子法の研究自体が1018年度後期から開始した研究テーマであったため、基本的な流体-構造連成解析のプログラムの完成を目指した。1年間研究を実施したことにより、基本的な解析プログラムは完成し、いくつかのベンチマークテスト(構造解析においては弾性梁の振動や有孔板の引張試験、流体解析においてはスロッシングやスラミング)などを通して、その精度を確認した。 その結果、構造解析は比較的精度よく計算できるのに対し、流体解析では満足のいくような精度を出すことができないことが分かった。 特に流体解析においては現状、あらゆる状況を精度よく計算できる手法が存在しないため、流体解析を高精度化していくことが求められる。そこでまずポアソン方程式には高次発散モデルを適用し、時間きざみ幅を小さくしても精度を保つことができるようになった。またECSを加え、誤差を小さくした。次に自由表面条件については、時間的に自由表面を追跡するFATTを提案し、パラシュート判定と組み合わせることで、精度の向上を確認することができた。またこれらの手法を用いて船体の近傍に浮氷があるときとないときのスラミング荷重の比較を行い、浮氷によりスラミング荷重が増えうることを確認した。 一方で、粒子法のベンチマークのために、水波と有限長浮氷の連成解析手法を開発した。この手法を発展させ、氷のような弾性浮体のヤング率が変化する際の巨視的な特性を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粒子法の開発の進捗としては、おおむね計画通りに進んでいるが、他の手法と比較して粒子法はまだまだ検証が必要であり、かつ1回の計算に時間もかかるため、劇的に精度が向上しているわけではなく、満足のいく成果にはなっていない。 一方で、元々は粒子法で波動のベンチマークとして水波と浮氷の連成解析手法を開発したが、ベンチマークのみならず、それ単体の研究として発展させることができ、国際論文誌にも掲載することができた。これは当初の計画では予期していなかったことであるが、本研究が良い方向に波及しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
当初次年度は、開発した粒子法による計算手法を用いて流体-氷-船舶の連成問題への適用可能性を示す予定であった。初年度にもパイロットスタディとして浮氷付近のスラミングを計算し、その可能性を示してきたが、現状の精度では説得力が不足しているように感じる。そのため、より高精度化する必要がある。 そこで、粒子法計算の詳細な検討を行うために、スラミング現象に注目し、古典的なスラミングの解析解から流体部の圧力分布を算出し、流体領域全体にわたる圧力分布の検証を行うことにする。さらに、水槽実験を行い、解析解、数値解、実験値を比較する予定であるが、コロナウィルス拡大防止の観点から、本年度に実験を行うかどうかは現在は未定である。 また、粒子法はスラミングなどの過渡的な応答の推定には適しているが、それよりも長い時間スケールには向いていない。また、現状では3次元問題への拡張はできていない。 そこで、粒子法とは別に、ランキンパネル法を用いて氷海中を航行する船舶の耐航性能を推定する計算手法を作成する予定である。 以上のように、粒子法にとどまらず、多角的な視点から、流体-氷-船舶の連成解析手法を解析していく予定である。
|