令和3年度分の研究実績として、超伝導ワイヤ積層型界磁磁石の試作について計画記載の内容に沿って実施した。表題の界磁磁石が適用される推進動力用回転機は、電気抵抗ゼロと強磁場発生が可能な超伝導材料を利用した、CO2排出量の抑制に貢献する高効率な動力である。令和3年度は、強磁場を発生するための界磁部について電磁解析を用いた電流密度分布の計算プログラムを独自に作成し、初年度に調達を行った商用ソフトウェアに組込をおこなった。対象としては令和2年度に製作、試験を行った円弧状に形成された試作の界磁表面を超伝導テープで覆われた超伝導ワイヤ積層型界磁磁石とした。超伝導体は外部の磁束を着磁により捕捉する能力を有しており、計算結果の検証を実測と比較して行った。実測は着磁機構を用いて、積層ワイヤ界磁に着磁法の一種であるフィールドクーリング法にて着磁を実施した。その後、捕捉磁束密度分布の測定を液体窒素条件下で実施した結果を比較対象とした。その結果、曲げ形状の超伝導ワイヤ積層型界磁磁石をソフトウェア上で再現した。結果として電磁解析に加えて超伝導材料のパラメータを考慮した解析実現のため材料特性を追加して試算可能となった。研究成果としては国際学会にて2件の発表を行った。 補助事業期間全体として、積層ワイヤの小型模擬モデルの構築、界磁極へ搭載した際の形状効果による捕捉磁束密度の向上の確認と電磁解析による着磁された積層超伝導ワイヤの捕捉磁束分布を再現するプログラムを構築できた。計算結果の妥当性や大型の界磁極への適用については今後の課題である。COVID-19の影響により当初計画どおりとはならなかったが、オンライン形式および日本国内で実施されたハイブリッド形式での国際学会発表等により、実証結果と電磁解析を照らし合わせながら本研究の成果について取りまとめて研究成果を社会発信することができたと考えている。
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