本研究の目的は直立壁を仮定した理論に基づく波浪中抵抗増加推定法の検証と改良である。 本年度は本研究の第2年度であり最終年度であった。初年度に直立壁に近いような肥大船の船首部(原型)の模型船、また船首部の水面上形状を抉るように細くした船首部や水面下の船首バルブの形状を変更した模型船で水槽試験を実施し、水面上形状や船首バルブの形状によって波浪中抵抗の低減効果があることを確認していた。第2年度である本年度では、この現象を解明するため、船首部の側壁との水面との角度を完全に直立にして単純化した模型船と、水面との角度を直立壁から一定割合で小さくして単純化した模型船を用いて水槽試験を実施し、その違いを考察した。 水槽試験はディフラクション力を抽出するために速度0で行った。なお通常の波浪中抵抗増加試験では6自由度のキャリッジを用いているため、運動を固定するため異なるキャリッジを使用し、治具の製作を行った。波向は向波、波高は実船1.6m相当、波長はλ/L=0.3~0.9、0.1刻みで実施した。得られた抵抗から喫水・周波数影響係数を抽出して船首部による差を確認した。ディフラクション力は時系列の振幅が大きく結果の幅が広いものの、各波長で複数回計測した平均をとると全波長で明確に差が出ていることからモデル式の改良について検討を実施した。側壁と水面との代表角度による表現を検討し今回のように単純化した形状の模型船では表現が可能であることを検証した。
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