研究課題/領域番号 |
19K15224
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
馬 驍 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (10825920)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 排ガス処理 / SOx / 湿式スクラバ |
研究実績の概要 |
地球環境負荷低減のため、船舶から排出されるガスの浄化が求められており、その一つの手段として、ガス中の硫黄分(SOx)を除去するスクラバ技術がある。本技術は、大気に放出する前の排ガスに洗浄水を噴霧することで、ガス中の硫黄分を洗浄水中に溶解させるものである。しかしながら舶用スクラバは大型となってしまい、小型船舶に搭載することが困難であることが現状の課題である。代表者らの先行研究において、ガスに噴霧する条件をパラメータとして実験を行った結果、小型のスクラバでも十分に排ガスの浄化が可能である結果を取得できた。しかしながら、小型スクラバ内における浄化のメカニズムについては明らかにできておらず、過去の研究においても詳細に記述した前例はない。 本研究は、小型船舶を含めた全船種に搭載可能な小型スクラバを開発するため、スクラバ内に生じている現象を明らかにする。スクラバ内における輸送現象については、混相流モデルをベースに、SOxの移動を解く。また一方で、スクラバ内で生じている現象を可視化計測する。計算結果と可視化計測結果の比較を繰り返し行いながら数値モデルを更新し、さらには実機試験で得られる結果との比較を行うことで、スクラバ内におけるSOx除去メカニズムを明らかにするものである。 今年度構築したスクラバ内のSOx除去予測モデルは、排ガス速度と洗浄水の噴霧速度が同一の混相流モデルに加え、既存の液滴蒸発モデルや気液界面を通過する物質移動モデルを組み合わせた。このモデルを用いて、本研究グループの先行研究で実施した小型SOxスクラバを用いた計測結果と比較した。その結果、スクラバ前後のガス温度やSOx除去量が洗浄水の噴霧量、液滴径によって変化する定性的な一致を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スクラバ内の数値計算と可視化装置の構築を行ってきた。数値計算では、混相流モデルに基づいてSOxスクラバ内の熱・物質輸送を記述する一次元の方程式系を組み、安定して解くことができた。計算の結果として、洗浄水の噴霧量、液滴径等について検討できた。可視化装置についても既に構築が完了し、2年目の可視化試験に向けた準備ができた。これらはいずれも当初の初年度の計画通りに達成した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に構築した数値モデルは、気液間の速度差がなく、一次元のモデルに基づき、噴霧液滴のみがスクラバ内に充満していると想定した。しかしながら実際のスクラバは、気液間に速度差があり、洗浄水の噴霧ノズルから拡がりながら流れ、液滴と液膜がスクラバ内に存在していることが実機試験の結果から確認されており、二次元のモデル等、より詳細なモデルを検討することが求められる。 併行して、準備を進めているスクラバ内の可視化装置による要素試験を実施する。次年度からスクラバ内の様相を可視化計測し、噴霧の角度、液滴径の噴霧圧力の影響、液膜厚さ等について詳細な情報を取得し、数値モデルの妥当性を検証、モデルの改良を行ってゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加に係る参加費、登録費、並びに物品購入費の端数により次年度使用額が生じてしまった。 次年度使用額は、2年度目の可視化試験を実行する上で購入する物品費用および研究打ち合わせなどの旅費として使用する予定である。
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