研究課題/領域番号 |
19K15225
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
新田 好古 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (50608627)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ガスエンジン / メタンスリップ / Pd触媒 / CO吸着 / 活性点評価 |
研究実績の概要 |
近年,環境負荷を大幅に低減するガスエンジンが注目されており,現在,舶用の高・中速ガスエンジンは,希薄予混合燃焼(リーンバーン)方式が採用されている。一方,リーンバーンガスエンジンは,温室効果が高い未燃メタン(CH4)を排出するメタンスリップの課題がある。これに対応する排ガス後処理技術の一つとして,酸化能力の高いパラジウム(Pd)を用いた酸化触媒の研究開発が進められている。これまで,排ガス中の水分がPd触媒上のCH4酸化反応を阻害し性能を低下させることが知られており,実用に向けた最大の障害となっている。本研究は,舶用エンジンの排ガス中CH4を除去する酸化触媒の利用技術確立に向け,排ガス中水分によるCH4酸化性能の低下メカニズムを明らかにすることを目的に,排ガス温度及び雰囲気下におけるPd触媒の新しい活性点評価法を確立する。 H31年度は,ガスエンジンの排気温度域において,Pd触媒の活性点に与える影響を検討するため,Pd活性点評価法のモデルの考案及び動的CO吸着量評価装置の構築を行った。さらに構築した評価装置におけるPd触媒の前処理条件を検討するにあたり,動的CO吸着量評価における触媒体積とキャリアガス流量の比に関するパラメータであるSV値及びLV値を変化させ,CO吸着量の評価に及ぼす影響を検討した。この結果,Pd触媒のCO吸着量は,LV値よりもSV値による影響を強く受けること,また測定温度に対してピークをもつことが明らかになった。さらに,Pd担持量がCO吸着量に与える影響を調査し,Pd担持量が大きいほどCO吸着量が増加する傾向が確認された。この結果は,同じ温度におけるCO吸着量が多いPd触媒の方が,有効な活性点量が多く,高いCH4転換率が得られる関係を説明する手がかかりと考えられるため,次年度以降に行う触媒担体種類がCO吸着量に与える影響を調査するための基礎的な知見となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
順調である。H31年度は,Pd活性点評価法のモデルの考案及び動的CO吸着量評価装置の構築を行った。また,構築した動的CO吸着量評価装置及び手法を用いて,触媒体積とキャリアガス流量の比に関するパラメータであるSV値及びLV値を変化させ,CO吸着量の評価に及ぼす影響を検討した。今年度は,これらの結果を取りまとめ、米国機械学会(ASME)における、Internal Combustion Engine Division Fall Technical Conference 2019において発表した。さらに,次年度以降行う予定の触媒担体種類がCO吸着量に与える影響を調査するにあたり,担体の材料種類が異なるPd触媒が一部入手できたことから,先行してCH4酸化性能の評価及びCO吸着量評価を実施し,第89回日本マリンエンジニアリング学会講演会において報告した。これらのデータは,年度以降行う予定の触媒担体種類がCO吸着量に与える影響の検討にあたり,基礎的なデータとなる。
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今後の研究の推進方策 |
R2年度は、平成31年度に構築した動的CO吸着量評価手法及び装置を用いて,担体の種類を変化させた時にPd表面積及びCO吸着量に与える影響を調査する。アルミナ基材,シリカ基材及びアルミナ-シリカ混合基材と担体の材料種類が異なる3種類のPd触媒の準備を進めており,複数種類のPd触媒におけるCO吸着量に与える影響を調査可能となる。また,平成31年度に購入したO2濃度測定器を用いることにより,水の代わりにO2を用いたCO吸着量の評価も行うことが可能と考えるため,CO吸着量評価に与える影響の違いについても検討可能となる。これらの検討を通じて,排ガス中水分によるPd触媒のCH4酸化性能の低下メカニズムを明らかにすることにより,舶用エンジンの排気環境下で使用するPd触媒を選択するための指標として,本手法の有効性に関する技術的な知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
競争入札等により当初予定価格よりも安価に物品購入ができたため。次年度使用するガスボンベ等の実験消耗品に使用する。
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