研究課題/領域番号 |
19K15233
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
和田 祐次郎 広島大学, 工学研究科, 共同研究講座講師 (20804595)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 海運経済 / 需要予測 / 環境規制 / システムダイナミクス |
研究実績の概要 |
近年,温室効果ガス(以下,GHG)を低減するための船舶の減速運航,SOx,NOx排出量の段階的規制強化等が国際海事機関(以下,IMO)で議論・審議されている.そしてこれらの環境規制が海運市況・造船需要に与える影響,関連業界への波及についても着目されており,高度な海運市況・造船需要予測モデルの重要性が高くなっている.本研究では,海運によるGHG排出量を予測すると同時に,環境規制の影響を考慮した海運市況・造船需要の予測,海運・造船業の最適な経済発展シナリオを検討するシステムを開発する. 本研究で開発するシステムは以下のサブシステムより構成される. ① GHG 排出規制の影響評価システム:入力情報である世界GDP,貨物輸送距離,海運・造船市場データを読み込み,海運・造船マーケットモデルを利用して将来の必要船腹量とその構成を予測する.そしてこの船腹量の予測結果を基に,GHG 排出量予測モデルを用いて,GHG排出量の推移を予測する. ② GHG 削減シナリオ策定支援システム:GHG 排出量の規制強化シナリオを生成するシステムである.環境規制を満足する技術・政策オプションを選択し,その詳細シナリオを作成する. 上記の①システムを連携させることで,海運・造船市場において最適なGHG排出規制強化シナリオを検討する.なお選択可能な技術・政策オプション,それによるGHG 削減効果,海運・造船市場への影響等については予めモデル化する. 令和元年度は,上記の①,②のシステムを開発し,各種シミュレーションを実施し,現状の対策候補である,(1)減速運航,(2)LNG燃料の導入,(3)EEDI(Energy Efficiency Design Index)規制,(4)老齢船の強制廃船,(5)ゼロエミッション船の導入によるGHG排出量削減効果を定量的に評価した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実績は交付申請書に記載した研究実施計画と合致するものであり,当初の計画通り順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度の研究成果に立脚し,令和2年度以降は以下を実施する. 1) GHG削減シナリオの自動生成機能の定義:設定した環境規制を満足するように,適用する政策・技術オプションの選択,その適用量と実施する時期を自動的に決定する機能を定義する.詳細シナリオの決定には最適化手法を用いて,GHG削減に必要なコストを最小にしつつ,海運・造船業が持続的に利益を確保できるシナリオを自動的に決定する. 2) 政策・技術オプションのデータベースの拡張:導入していないの政策・技術オプションによるGHG削減効果,適用可能な時期についてデータベース化する.また適用する技術・政策オプションによっては,海運・造船市場の環境に強制的な変化を与える.これらについては,システム思考等を用いてモデリングを行う. 3) 各種シミュレーションの実施:上記の1)-2)を導入してシステムを再構築する.そしてシミュレーションを実施し,海運・造船市場において最適なGHG排出規制強化シナリオを検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
計画当初,購入予定であったデータベースよりも,より高精度なデータベースを申請者が所属する組織で利用することができたため,購入の必要がなくなった.それにより次年度使用額が生じた.(申請者は令和元年度より現在の研究機関に異動している.) 来年度は現状よりも負荷の高い計算を行う必要があるため,解析用計算機,ソフトウェアの購入等に用いる.また従来通り,研究調査・成果発表用の旅費,成果投稿料等に用いる.
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