本研究では、微小な欠点の検出が求められる目視検査を対象として、検査対象と検査環境、検査者の3つの観点から整理し、高い検査精度と検査効率を実現するための要件を解明する(分析的アプローチ)。そして、人間の視覚特性に合わせて検査環境と検査方法を設計・訓練するシステムを開発するとともに(設計的アプローチ)、それらの作業を管理するシステムを構築することを目的としている。さらに、構築したシステムを実際の目視検査工程に適用し、その有効性を検証することを目指している。 本年度は、昨年度までに開発した欠点の視認性を定量的に評価するための測定システムを用いて、実際のいくつかの生産現場でその有用性を検証した。また、これまでの研究で得られた実験結果と昨年度実施した被験者実験の実験結果を集約してデータベースとし、検出すべき欠点の特徴に合わせて検査精度と検査効率を両立する検査方法を設計する方法の手順化とシステム化を行った。さらに、考案した検査方法を作業者に効果的に教育するための訓練システムと作業の状況をリアルタイムで把握するための管理システムを開発した。 これらの検討の結果、多くの目視検査工程で対象とする製品に対して、検査環境や検査方法、訓練方法、管理方法を示すことができた。さらに、目視検査を実施する製造業の協力を得て、これまでの研究で得られた方法論に基づいて検査環境と検査方法を設計し、その有用性を検証した。その結果、これまでは生産現場で検出が困難とされていた欠点であっても比較的容易に検出できるようになり、検査精度を向上させる効果があることが確認された。また、開発した訓練システムには検査方法を作業者に効果的に教育する効果があることが実験的に確認された。
|