プロジェクト実施の際には,遅延の原因となる不確実性を考慮して,スケジュールの立案と進捗管理を理論的に実施する必要がある.しかし,現場でのスケジュールに関する意思決定は経験則に依存しており,研究分野においても計画プロセスの一部を切り取った限定的な内容にとどまっている.本研究の目的は,不確実なプロジェクト環境において,スケジュールの立案と進捗管理を包括的に扱うための手法を確立することである. 本研究では,まず包括的なプロジェクトモデルを定義した.このプロジェクトモデルでは,スケジューリング段階で,各作業の工数,割り当てる資源,開始時刻に加えて,スケジュールの実施段階で生じた遅延への対応として修正を行う際の優先度を決定する. 次に,進捗管理を考慮したスケジュール評価方法を提案した.提案手法では,スケジュールに対して作業遅延と進捗管理をともなうシミュレーションを複数回実施し,仮想的な実施結果を得る.そして,仮想的な実施結果との差異が小さいスケジュールを良好であると評価する.シミュレーションには,CPUよりも並列処理を得意とするGPUを用いて,複数のシミュレーションを並列に実施ことで計算時間の削減を図る. 2023年度は,シミュレーションによる評価を導入した局所探索法に関する研究をまとめた論文を投稿し,採択された.さらに良好なスケジュールを得るために,反復的な局所探索ほうを提案し,学会発表を行った.
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