研究課題
自然災害の多い我が国では,災害時の事業継続性の向上が喫緊の課題である.災害時の医療の継続性を高めるには,関連組織の連携が不可欠であり,地域単位での事業継続マネジメントシステム(以下,地域BCMS)の構築が急務である.本研究の目的は,地域BCMSを関連組織に導入,推進するための教育において,職員の危機意識を向上できるような教育方法,実証方法を明らかにすることである.教育内容は①BCMSの意義,②災害対策本部の運営,③停電や断水発生時の業務への影響の3つとし,ある災害拠点病院で実施した.①はスライド教材とテストを作成し,令和2~4年度にeラーニングで教育した.受講終了後に,受講状況が記録されたアクセスログを分析し,各設問の正答率を算出した.その結果,狙い通りに教材やテストを作成できていることが明らかとなったが,一部の設問の正答率が低かったため,解説をフィードバックするなど,改善を図った.②は参加者がカードに記載された病院の被害状況に関する情報を確認し,それをもとに,災害対策本部としての対応や決定すべき事項を検討するという机上での状況付与判断演習を令和2年度に実施した.演習の評価は,演習時に対象者が検討した対応と,過去の災害時に行われた対応を比較し,両者が一致していれば正解と捉えた.③は薬剤部を対象に,令和3,4年度に実動訓練で実施した.具体的には,地震後に停電が発生し,平時に使用している機器の一部が使用できない状況を想定して,実際に調剤業務を行ってもらった.その実証方法として,危機意識と行動の変容度を評価する方法を確立した.まず,人間の危機意識や行動が変化するまでのメカニズムを明らかにした.これに沿って危機意識や行動の変化,ならびにそこに至るまでの要因に当てはまるかどうかを問うアンケートを作成した.結果,演習により危機意識は向上したが,行動が変容するまでには至らなかった.
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Total Quality Science
巻: Vol.8, No.1 ページ: 23-31
10.17929/tqs.8.23
経営システム
巻: Vol.32,No.2 ページ: 120-125