2022年度は、2021年度の研究で課題とされた交通シミュレーションのための車両生成モデルの構築に取り組んだ。これまでの研究に基づいて着想した「交通はランダム部とパターン部に分離される」という視点に立ち、試作モデルとしてガウス過程回帰モデル(GP)とEvidential Deep Learning(EDL)を作成した、予測性能の検討では、車種毎に予測性能が向上/低下する結果が得られた。モデルパラメタや構造の探索等が今後必要である。 さらに安定性の高い(渋滞しづらい)車列の探索について、Evolutionary Algorithm(EA)を用いて、定められた車列入れ替え回数内で、考えうるあらゆる車列順から「現状より安定で渋滞しにくい車列」への変換手順を出力可能となった。 なお2021年度には、各車両群の分離が「類似の粒子が集まる偏析現象」だけでは説明できないことがわかっていた。この原理を探るべく、2022年度には動物を用いた実験を試験的に実施し、行動のバラつき抑制が今後の課題として挙げられた。 本研究は、実際の二次元混合交通車列の特徴を抽出し、それを安定な(渋滞しづらい)車列と比較することで、車列順の改善点を提案することを目的とし(A)ドライバーが認知する車両関連性の測定とモデル化(B)車両関連性に基づく二次元車列のネットワーク的評価(C)車列の安定性解析と車列改善点の提案に取り組んだ。これらと先行研究の結果を用いることで、限定的ではあるものの車列の改善点を定量的に検出するアルゴリズムが作成できた。また、既存の車線に基づいた理論では捉えきれない二次元混合交通に潜む特徴的な現象(ドライバー遅れの安定性への影響/新たな群れ行動)が発見された。これらの結果は、今後交通工学/応用数理分野で研究が進む、新興国道路交通の研究の基礎となるものである。
|