研究課題/領域番号 |
19K15255
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
丸山 翼 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (50817161)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | デジタルヒューマン / デジタルツイン / 運動計測 / アクセシビリティ |
研究実績の概要 |
本年度は屋外歩行者のデジタルツイン構築のための,運動推定研究について取り組んだ.従来,全身に13~17個のIMUを装着した全身運動推定や,靴に装着したセンサを用いた歩行指標推定しか行えなかった.そこで本年度は,少数センサを用いた全身動作計測システム開発とその検証について主に取り組んだ. まず,デジタルヒューマン開発プラットフォーム(DhaibaWorks)と,ディープラーニング手法の一つであるDeep Inertial Poserを組み合わせて,被験者に装着した少数のセンサ(6~7個)からその全身運動を推定可能なシステムを開発した.これにより,リストバンドや靴下,ベルトといった着想具内のIMUを用いて被験者の全身運動を推定可能である. さらに,得られた全身運動から歩行指標(歩幅,歩行速度,下肢関節角度ピーク値)や安定性指標(BoS)を算出可能なシステムを開発した.屋外位置トラッキング用のGPSモジュールとの連携を確認した. 開発システムにより得られた全身運動が空間アクセシビリティ評価に活用可能な精度を有するか被験者実験を実施した.結果,股関節の最大伸展角といった指標については十分な精度を有するが,歩幅といった指標については精度が不足していることを確認した.機械学習手法の改善では良好な結果が得られなかったため,センサフュージョンによる精度改善に取り組んでいる.具体的には,靴に装着したIMUを用いた並進量推定技術を用いる予定である.靴センサによる推定結果,機械学習による推定結果,人体モデルの制約を組み合わせた最適化計算を解くことで,妥当な全身運動を推定する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は運動計測システムを完成させ,屋外運動データ収集が可能な体制を整える予定であった. 運動計測システムについては機械学習を用いたプロトタイプシステムを開発した.さらに開発システムの精度検証実験を実施した.開発した運動計測システムは股関節角度ピーク値といった指標は十分な精度を持つが,歩幅等はやや精度が不足していることが分かった.そのため計画を変更し,精度改善のためのセンサフュージョンに現在取り組んでいる. しかしながら,R2年度に実施予定であった歩行指標推定や安定性評価については本年度内に先行して取り組むことができた. 上記を総合的に考え,やや遅れているとした.
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今後の研究の推進方策 |
運動推定精度の不足が発覚したため,これを改善するためのセンサフュージョン技術の開発と,最適化による精度改善にまず取り組む. 一方,当初実施予定だった屋外での運動計測実験について,その実施方法の改善(実験者と被験者の接触を避ける等)が必要である.R2年度については若年者を中心に安全な方法で実験が行えないか検討が必要である.被験者自身が計測装置を扱えるように,開発システムのインターフェース改善を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は運動計測用の慣性測定ユニット一式を購入予定であった.しかし,システム開発用の慣性測定ユニット一式を所属機関でに利用可能になったため,その分(約130万円)繰り越しが発生した.また,屋外実験で使用予定の運動計測用ノートPCの購入は実験の延期により翌年に延期となった. 以上の理由により次年度使用額が生じた.
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