本研究では,装着式センサを用いて歩行者の身体運動を推定し,歩行環境の3次元形状データ等と組み合わせることで環境のアクセシビリティを様々なコンテキスト下で評価できる技術の開発を目的とした. 1年目は,ディープラーニングと少数IMU(慣性計測ユニット,6-7個)を組み合わせたリアルタイム全身運動推定技術を開発し,デジタルヒューマンソフトウェアプラットフォームであるDhaibaWorksに実装した.2年目はこの動作計測技術を用いて,実際に屋外歩行計測実験を行う計画であった.しかし,感染症等の影響により被験者実験を実施することができなかった.代わりに,広島大学の研究者とともに,日本大学の3D点群データとKinematic歩行シミュレーションを組み合わせ,安全なルート提案技術の開発に応用した.3年目も被験者実験の実施が困難な状況であったため,当初計画から変更して研究を実施した.安全なルート提案技術の論文化,お台場の3D点群データの取得とそのas-isモデリング,この点群上でのKinematic歩行シミュレーションに関する研究を実施した. 最終年度は,コンテクストの一例として若年者・高齢者だけじゃなく下肢装具使用者の歩行シミュレーションが行えるように改良した.さらに,つまづきリスクに加え歩行中の膝折れリスクも評価できるように改良した.このように,個別のユーザに対する特有のリスク評価ができるようになった.ただし,本成果についてはまだ検証実験中のため,実験が完了次第論文投稿を行う予定である. 以上より,実験ベースでの研究実施を予定していた当初計画から大幅な変更はあったものの,深層学習ベースの動作計測,3D点群データ処理,デジタルヒューマン歩行シミュレーション技術を組み合わせることで,下肢装具の使用といった歩行に関するコンテクストを考慮しつつ,環境のアクセシビリティを評価できる技術を開発した.
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