令和3年度は白神山地における地すべり地を対象に、一周波GNSSを用いて2021年5月20日から2021年11月16日までの全期間の3次元変位連続計測をした。解析成功解(Fix解)の中で、観測数が480以上のデータを採用し、その中で平均値からの残差が2σ以内のデータを使用した。なお、GNSS計測点は、南側ブロックの末端部にG1と北側ブロックの末端部にG2を配置し、基準点は観測点から約3.8km離れた美山湖パークにK2を配置した。G1とG2のそれぞれの解析成功率は約15%と5%と低い値とった。G1観測点では、観測期間において、南方向へ2㎝程度、東方向へ13㎝程度、隆起へ2㎝程度変位が計測された。一方で、G2観測点では、南方向へ1㎝程度、東方向へ5㎝程度、沈下へ5㎝程度変位が計測された。また、G1とG2の2021年5月以降の計測期間中に50㎜/日を超える降雨時に特に変位の急激な増加は認められないが、計測期間の約5ヶ月を通じてそれぞれ水平合成で5.7cmと12.7cmの累積変位量が計測された。一方、今年度の解析結果の標準偏差が10㎝程度で、通常のスタティック測位の精度と比べ、昨年度の結果と同様の劣る結果となった。その原因としては、基線長は2㎞程度を超えると電離層の影響が表れ一周波式でも補正しきれないため、解析が乱れることを容認する必要があることが分かった。さらに、地すべり発生履歴の解明について、炭素年代測定や樹木年輪年代学的手法により復元し、その年代値を歴史記録と対比することを試みた。
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