研究課題/領域番号 |
19K15258
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研究機関 | 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構 |
研究代表者 |
寅屋敷 哲也 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構, 人と防災未来センター, 主任研究員 (50758125)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 災害時応援協定 / 官民連携 / 地方自治体 / 事業継続マネジメント / 事業継続計画 |
研究実績の概要 |
本研究は、地方自治体と民間企業の災害時応援協定の締結および災害時の官民連携の実践における支障要因を抽出し、行政がいかにして支援要因を乗り越えるかの改善方策について、民間企業視点の調査をもとに示すことを目的としている。2020年度は以下の研究を実施した。 (1)災害時応援協定データベースおよび協定書データの獲得:2019年度より調査を進める中で存在を把握した内閣府の令和元年度災害時応援協定データベース(オープンデータではない)を入手するために、内閣府に対する行政文書開示請求を行い、データベースの電子ファイルを獲得することができた。また、全国自治体の災害時応援協定の協定書のデータについて内閣府と交渉し、データの貸借についても承認された。 (2)災害時応援協定データベースの解析:入手した災害時応援協定データベースは、47都道府県1741市区町村の災害時応援協定約8万件のデータが収録されているエクセルファイルである。本研究の目的から、まずは同データベースに基づいて企業視点からの分析を行った。その結果、災害時応援協定を締結している企業の業種と協定の応援内容の関係が明らかとなった。具体的には物流関係や情報・通信関係の企業が幅広い応援内容の協定を締結している実態が得られた。なお、本分析の成果は、日本災害情報学会の論文に投稿している。 (3)アンケート調査対象企業選定作業:災害時応援協定データベースのリストを整理したところ、民間企業と締結している協定の数は約3万件(1件で複数社と協定が締結されている協定が多い)であり、これを緻密に民間企業ごとに整理する作業を行った。全ての企業を調査の対象とする非常に多くなり、調査実施のコストが大きいため、調査対象を減らすため、複数の自治体と協定を締結している企業に条件を変更して整理作業を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度に協定を締結している企業にアンケート調査を実施する予定であったが、調査の実施は、2021年度に遅らせることとした。その理由は以下の通りである。 第一に、協定を締結している企業を特定することに時間を要したことである。これについて、内閣府の災害時応援協定データベースの入手方法の検討と入手のための手続きから獲得までに時間を要した。入手方法を模索する上で、自治体危機管理関係者や内閣府等の担当者と相談を進めながら、行政文書開示請求により入手可能という結論になった。データを入手できたのは2020年8月、協定書データは12月である。別の方法として、各都道府県・市町村に協定を締結している企業のリストを調査する方法も検討したが、回答率が少なければ網羅性が乏しく、データの有用性には問題がありそうだったため、時間は要したものの、網羅性もありデータの信頼性もある内閣府のデータベースを入手する方法を選択した。 第二に、調査の実施については、当初2020年度末の実施の予定で進めていたものの、他の研究プロジェクトにおいて年末から年始にかけて企業を対象としたアンケート調査を実施したところ、新型コロナウイルスの感染症が拡大していた時期ということもあり、回答率に問題があった。この状況を踏まえて、本研究の企業を対象としたアンケート調査は、新型コロナウイルス感染症がある程度落ち着いたタイミングで実施することに方針を変えたことも要因として大きい。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は最終年度ということもあり、アンケート調査を年度の前半で実施して、後半に分析をする方針で進める予定である。ただし、現時点(2021年5月)では緊急事態宣言が出ている状況を踏まえて、アンケート調査の実施は緊急事態宣言後に実施する予定としている。調査の実施については、効率性を重視し、調査会社に委託して進める。その為の準備については、緊急事態宣言明けに実施できるように進めていく。 また、本研究は企業への調査がメインではあるが、調査の実施が遅れる中、内閣府の災害時応援協定データベースを活用して別途研究の余地があるかを検討した。その結果、将来発生が懸念される南海トラフ地震の想定被災地域において拡充すべき官民の災害時応援協定を提言することは重要であると考え、南海トラフ地震と類似の被害様相が想定される東日本大震災の被災地において震災後に増加した災害時応援協定の分野を、データベースの分析により特定し、現状の南海トラフ地震想定被災地の協定の締結状況と比較して、必要な分野を明らかにする研究を行う方針とした。この分析は、当初の研究計画で目指す方向である協定の拡充に対して寄与することから、初年度に大きな研究実績を残せなかった分を本年度に巻き返して実施することとした。 以上、2021年度は、企業アンケート調査およびデータベース分析の2点の方策で研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、2020年度にアンケート調査を実施していたが、先述の通り2021年度にアンケート調査の実施を遅らせたことによることが大きい。また、アンケート調査対象企業を選定するために内閣府の災害時応援協定データベースを入手する方針としたことから、自治体を対象とした調査を別途実施する必要がなくなったことにより研究費の使用額は最小限に抑えられた。なお、内閣府の行政文書開示請求では非常に少額によりデータベースを入手することができた。 次年度の使用計画としては、企業を対象としたアンケート調査を実施する上で、調査会社に調査を委託する費用に多くを支出することとする。また、調査結果のデータ入力についても業者に委託して予算執行を行う。さらに、データベースの容量が非常に大きいため分析に必要となる処理能力が高いPCの購入や設備環境を整備する費用に研究費を充てることとする。なお、2021年度は、論文の投稿も複数考えているため、学会・論文関連費用についても支出することを想定している。
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