本研究では,研究代表者が開発する震災時の道路ネットワーク復旧計画策定手法に災害レジリエンス向上モデルを導入した,震災復旧戦略検討システムの開発および運用を目指している.研究期間は当初3年間を予定していたが,震災復旧戦略検討システムの開発と研究のとりまとめのため,1年間延長した. 2022年度は震災復旧戦略検討システムの開発に取り組んだ.開発したシステムは主に次の機能を有する:1) 分析に必要なデータ作成支援機能,2) 復旧計画策定機能,3) 分析条件や復旧計画策定結果の可視化機能.1) はオープンソースのGISであるQGISのプラグインとして開発した.3) はオープンソースのWebGIS(iTowns)を利用したWebシステムとして開発した.この2つの機能を連携させるため,2) 復旧計画策定機能の入出力を改良した. 本研究の貢献は,レジリエンスの概念の具体的な社会実装に取り組んだ点にある.研究期間全体における本研究の主な成果は次の通りである.1) 震災時の道路復旧計画策定に災害レジリエンス向上モデルを導入した.具体的には,システムの性能低下から回復に至るグラフの面積を最小化するレジリエンスの三角形に基づく評価方法を採用した.さらに,道路復旧のみを優先する単目的の計画策定手法に加えて,物資搬送など異なる復旧目的を同時に考慮する多目的の計画策定手法を提案した.2) 震災復旧戦略検討システムを開発し,インターネット上で公開して,本研究の成果を活用できるようにした.3) 香川県東かがわ市をモデル地域として,市町規模の震災復旧戦略検討の必要性を示した.ケーススタディでは,香川道路啓開計画の指定道路に地域の建設業が進出するための道路復旧や,被災地域の住民が日常使用する生活道路の復旧も考慮し,市町としての復旧優先順位の設定が必要であることを示した.
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