研究課題/領域番号 |
19K15266
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
福谷 陽 関東学院大学, 理工学部, 准教授 (10785322)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 確率論的津波ハザード評価 / 津波ハザードマップ / バッファゾーン / 固有直交分解 / モード分解 / BPT分布 / 相模トラフ巨大地震 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、津波ハザードマップのバッファゾーン設定等に資する確率論的津波浸水評価手法の枠組みを構築した。具体的にはまず、相模トラフ巨大地震の断層の規模、断層の深さ、断層滑りの平面分布を変数とした想定断層を複数生成し、津波数値計算を実施することで、対象地域における複数の津波浸水深分布のパターンを得た。そして、これら津波浸水深分布を対象としてモード分解(固有直交分解)を適用することで津波浸水深の空間相関を抽出し、応答曲面法と組み合わせることで、多数の津波浸水深分布を得た。モード分解を適用することで、対象地域において考え得る津波浸水深分布のパターンのうち、影響の大きい浸水分布(モード)のみを抽出することが可能なため、計算負荷の低減に繋がる。同一の与条件下において、モード分解から得られた浸水深分布と、津波数値計算の結果得られた浸水深分布を比較したところ、結果がほぼ一致したことから、提案手法の精度は高いと言える。さらに、多数の津波浸水深分布の結果に、地震の発生確率を当てることで、150年、500年、1000年等の確率規模毎の津波浸水深分布を得ることができた。発生確率分布として、BPT分布を用い、相模トラフ地震発生の切迫性を考慮できるようにした。 本研究で提案した確率論的津波浸水評価手法を用いれば、発生確率を定量的に考慮した津波ハザードマップの生成が可能であり、不確実性を考慮したバッファゾーン設定や、今後、市町村が要避難対象区域を設定する際の一手法として利用されることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度までに、当初計画していた、①ハザードマップにおけるバッファゾーン設定の現状調査(令和元年度)、②確率論的津波浸水域評価とバッファゾーン設定に関する研究(令和2年度)について概ね研究が終了したため、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は主に、過去2年間で得られた研究成果を公表するための論文執筆および投稿や、学会発表の期間とする。また、新型コロナウィルス感染症の状況にもよるが、令和元年度に実施したアンケート調査で回答があった複数の市町村を訪問し、バッファゾーン設定の現状について、追加のヒアリングを実施することを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、当初、令和2年度に見込んでいた学会発表や出張等による旅費・交通費の支出ができない状況となったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額については、令和3年度に、主に論文投稿費や旅費・交通費として使用する他、データ解析ソフトの年間保守費用等を支出する予定である。
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