研究課題
昨年度は、(a) 観光客へのサンプリング調査研究、観光客による一斉帰宅緩和のための震災時帰宅行動研究(b) 観光客避難シミュレーション研究、(c) エージェントシミュレーションによって避難計画の評価を行うゲーミングシミュレーション研究を実施した。(a1) 京都市の外国人観光客150名から災害に対するリスク認識や避難に関する知識、情報へのアクセスについて尋ねたアンケート調査を実施した。その結果、外国人観光客は高いリスク認識を持つものの、その防災知識には未知や誤認が含まれる。防災情報取得のための行動意図は低く。外国人観光客を守るためには共助や公助に頼らざるを得ない現状が明らかとなった。(a2) 姫路城内観光終了後の観光客を対象にアンケート調査を行い、公的支援の内容ごとに属性、観光形態を説明変数として観光客の帰宅意図に影響する要因抽出を試みた。決定木分析より、「情報提供」、「滞在する施設の提供」、「水と食料の提供」などの公助の支援が、観光客の行動意図に影響を与え、一斉帰宅を緩和できることが明らかとなった。(b) 歴史都市や文化遺産を抱える観光地が円滑に復興を遂げるには、まず観光客に対する円滑な災害時支援が不可欠であるという立場から、観光客の一斉帰宅を抑制するためにどのような避難誘導が必要なのか、その検討を可能にする避難シミュレーションの提案を行なった。(c) 市民が考えた避難計画を研究者が開発したエージェントシミュレーションという手法を用いて評価する参加型避難計画策定ゲーミングによって、市民によるコミュニティ防災活動の実現に必須である正統的周辺参加の実現可能性を検証した。本ゲーミングがコミュニティ防災の要件を満たすことを明らかとした。
1: 当初の計画以上に進展している
1年目は、観光客に対して行った調査(a)、その結果を用いたエージェントシミュレーション(b)、そして机上訓練ツールとしてのゲーミングシミュレーションの試作(c)の(a)、(b)、(c)の各系列をまたぐ基礎的研究を一通り実施することができた。また、成果の発信に関しては、久留米大学で開催された日本地域学会第56回年次大会、イタリアのラクイラ大学で開催された3rd Silk Cities 2019にて発表した。
(a) 調査研究に基づくエージェントモデリング研究、(b) エージェントシミュレーションを用いた政策研究においては、これまでの研究作業をそれぞれ前進させ、被災前から被災後までの時間軸を対象に震災時観光客の行動の再現を試みる。さらに、(c) それらシミュレーションを用いた机上訓練ツールの構築までを行う予定である。また、成果発信としては、17th PRSCO Summer Instituteなどの国際会議を予定している。
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すべて 2019
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Hamada Ryoju, Soranastaporn Songsri, Kanegae Hidehiko, Dumrongrojwatthana Pongchai, Chaisanit Settchai, Rizzi Paola and Demblekar Vinod (Eds.) “Neo-Simulation and Gaming Toward Active Learning”
巻: - ページ: 276-286