研究課題/領域番号 |
19K15269
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研究機関 | 国立研究開発法人建築研究所 |
研究代表者 |
趙 玄素 国立研究開発法人建築研究所, 防火研究グループ, 研究員 (90839143)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ガス毒性 / ガス成分分析 / 燃焼生成ガス / 有害性ガス / 避難安全 / 触媒 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、火災室天井部の煙層に含まれる有害性ガスが降下するまでに、化学反応をさせ、無害な物質にする手法を検討することを目的としている。当該手法は、既存住宅および工事現場等での使用に適したものである必要があり、低コストかつ取り付けが簡単なものを想定している。
R1年度に小型の煙発生装置を作成し、触媒の種類を変更しながら散布する実験を実施し、効果のある触媒を確認した。具体的には、火災時の主な危険要因として知られている一酸化炭素に対して顆粒状のホプカライト、ホルムアルデヒドに対して液体の水酸化ホウ素ナトリウムがそれぞれ濃度の低減に有効であった。また、酸化チタンは水溶液の粘度が高かったため、作成した散布装置では適切に散布できず、R2年度に装置の改良を行い、再実験を行う予定であった。
しかし、R2年度では、新型コロナウィルスの影響で、研究所において、実験を行える期間が大幅に短縮し、測定装置(FTIR;同時に多成分ガスを定量定性でき、実験実施のために必須である)の調達が間に合わなかったため、実験を行うことができなかった。替わりに、予定していた装置の改良工事を行い、小型スプリンクラーから粘度が高い液体の散布が可能であることを確認した。また、昨年度の実験結果を精査し、研究成果を国際学会(米国Fire and Materials)に投稿したが、学会の開催時期がコロナ禍の影響で延期となり、現在未定となっている。さらに、液体を散布しながらIRを用いた測定にエラーが多く発生したことから、R2年度は実験時のサンプル採取方法などを工夫し、正しい解析結果を得るための実験技術を確立させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの影響で、実験を行える期間が大幅に短縮し、期間内に測定装置を調達することができなかったため、R2年度に実施を予定していた、材料レベルの燃焼実験、及びより大きな規模での実験について、実施することができなかった。当初予定していた小型煙発生試験装置の散布装置の改良のみを行うことができたため、R3度に予定していた実験を容易に行える環境を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、材料レベルの燃焼実験を行い、生成した燃焼ガスの濃度を効率的に低減できるよう、触媒の散布手法、散布量、種類や濃度を変化させ、より効果的な除去手法について確かめる予定である。
さらに、材料レベルの燃焼実験の結果を受け、室内に家具や壁紙等を配して初期火災から盛期火災を再現することが可能であるルームコーナー試験(ISO9705)を行い、各種有害性ガスの除去手法を用いた場合とそうでない場合のガス種の濃度比較を行い、除去手法の有用性について確かめる予定である。
今までの研究を進める中で、現在ガスの除去に有効と知られている触媒は、それ自体が人体に影響及ぼす恐れがあることが明らかになった。当初の計画では、「実用につながる複数ガス種に対して有用な除去手法の考案」を予定していたが、散布する触媒が避難者に悪影響を与えないための工夫が別途必要であるため、今年度の研究課題の研究目的を「火災室から燃焼生成ガスが高い濃度のまま避難経路に拡散しないよう、濃度を低減させる触媒の散布手法の開発」と想定用途を限定したものに変更する。本来の最終目標であった「既存住宅、工事現場、消防活動それぞれの環境を想定し、適した散布薬品の開発」については、将来的に検討を行う課題とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に実施できなかった材料レベルの燃焼実験を次年度に実施する予定であるため。
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