研究課題/領域番号 |
19K15272
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研究機関 | 総務省消防庁消防大学校(消防研究センター) |
研究代表者 |
佐藤 康博 総務省消防庁消防大学校(消防研究センター), その他部局等, その他 (60760296)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 熱分解GC / 赤外分光光度計 / 焼損物 / 火災原因調査 / 火災 / 物質同定 |
研究実績の概要 |
火災原因調査において、火災現場で採取した焼損物の材質を特定することは重要であるが、焼損物は火災の熱により溶融・炭化し、化学構造が本来の構造から大きく変化する可能性があるため、本研究は熱分解GCによる焼損物の材質の特定のための手法の確立を目指した。 本研究は以下の段階に分かれている。(1)様々な試料で加熱を行い、燃焼前後で大きく熱分解GCでの分析結果が異なる試料を確認し、研究の対象を明確にする。(2)疑似的に焼損させた分析用試料を再現性良く作製するための燃焼方法を検証する。(3)疑似的に焼損させた試料に関して、熱分解GCおよびFT-IRによる分析を行い、試料ごとに適切な分析手法を確立する。(4)火災原因調査における焼損物の同定に関する指針を作成する。 昨年度には、(1)を実施し、セルロース、ポリアミド類等について燃焼前後で大きく結果が異なることを見出し、(2)について検証を進め、TG-DTAによる試料の加熱について、重量変化、熱分解GCでの分析結果が再現性良く得られる試料が作成できることを、セルロース、ポリアミド類で確認した。 これらの結果を踏まえ、今年度は(3)についてセルロース試料を中心に研究の実施を行った。熱分解GCとFT-IRについて、それぞれ加熱による変化の傾向を把握することができ、空気雰囲気と窒素雰囲気の熱分解による化学構造変化の違いについて知見を得ることができた。また、燃焼させた綿製品を熱分解GCおよびFT-IRで分析した結果、窒素雰囲気で加熱したセルロースに近い結果となることが分かった。これらの研究成果から、燃焼したセルロース(綿製品等)の材質同定手法についてFT-IRおよび熱分解GCによる分析がどちらも有効である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に確立したTG-DTAによる加熱法を用いて、セルロース試料について熱分解GCおよびFT-IRによる焼損物の材質同定の可能性を示すことができた。本年度に得られた研究成果について、外部発表を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、加熱したセルロース試料について熱分解GCおよびFT-IRによる分析を行い、熱分解による化学構造変化に対する知見をえることができたので、次年度は他の試料(ポリアミド類、綿/ポリエステル混紡試料等)についても同様の手法を用いて分析を行っていく予定である。これらの得られたデータを基に、熱分解GCによる焼損物の材質同定の可能性を検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画に対して、試料を疑似的に燃焼させる電気炉について、別の予算での購入ができ、予算が節約できたためである。節約できた分に関しては、多くの実験を行うための実験補助にかかる費用や実験に必要な消耗品費として使用する予定である。
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