研究実績の概要 |
近年、大規模材料データベースと機械学習の手法を組み合わせて新しい知見を得る、Materials informaticsの研究が盛んに行われている。しかしながら、既存のデータベースを用いると、第一原理計算の精度の問題と、データベースが主に既報の材料を対象としていることに起因する構成元素や構造などのデータの偏りの問題が生じる。本研究課題では、第一原理計算の自動化プログラムを構築し、必要十分な計算コストの元に適切な計算条件で各物性値を計算し、また能動学習の手法を用いてデータベースの偏りを無くすように、データベースの増強を行う。 本年度の成果は以下の通りである。 (1)自動第一原理計算のソフトウェアの改良を更に進め、HSE06, non self-consistent dd-hybridの計算手法や、有効質量、光吸収係数の物性値計算に対応した。現在、開発したソフトウェアを用いて、既存データベースに存在しない物質の計算を進めている。 (2)前年度に行なった誘電定数の計算を改善し、様々な結晶構造型を含む1,266の酸化物の誘電定数の計算を行い、この結果から機械学習による予測モデルを構築した。このモデルの決定係数は結晶構造の情報を用いて電子系誘電率、格子系誘電率のそれぞれで0.89, 0.73であった。また、記述子の重要度解析により得られた因子が化学・物理学的に妥当であることを示した。これらの結果をPhys. Rev. Materials誌に投稿した。 (3)前年度に開発した特定の範囲の物性値を持つ材料の効率的探索手法について改良を行い、性能を改善した。Materials projectのデータを基に緑色発光半導体や太陽電池光吸収層に適した材料の探索シミュレーションを行なった結果、半数の探索で所望のバンドギャップを持つ物質の約9割を同定することができた。
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