研究課題/領域番号 |
19K15276
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
松本 圭介 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (90772377)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 磁気熱量効果 |
研究実績の概要 |
Hf1-xTaxFe2の一次相転移に対する(1)熱処理効果と(2)Fe含有量の効果について調べた.(1)熱処理の効果について調べるために,アーク溶解したままのas castと,1000℃で3日間,1100℃で7日間熱処理した試料を作製した.磁気相転移温度は熱処理を高温長時間するに従って低下した.1100℃,7日間熱処理した試料の磁化の温度依存性は,一次相転移のような鋭い異常を示した.また,磁気熱量効果もこの試料で一番大きくなった.これは熱処理を高温・長時間行うことで,アーク溶解で残存したFeなどが(Hf, Ta)Fe2相に固溶・均一化したためだと考えられる.(2)鉄含有量と磁性について調べるためにHf0.83Ta0.17Fe2+xをアーク溶解で作製した.x=0と0.02では,磁化の温度依存性において,240 K以下で一次転移的な急峻な磁化の増加,磁化の磁場依存性においてメタ磁性転移を観測した.一方,yが0.06以上では,磁化の温度依存性は350 K以下でブロードに増加し,磁化の磁場依存性でメタ磁性も観測されなかった.このときの磁気エントロピー変化の最大値は1 J/K kg以下と小さな値であった.格子定数はFeを増加させると低下した.FeはHfやTaよりもイオン半径が小さいことから,過剰なFeはHf/Taサイトに入ったと考えられる.Feサイトは2aと6hの2サイトあり,2つのサイト間の相互作用の競合によりメタ磁性が発現していると考えられる.過剰FeがHf/Taサイトへ入ることで強磁性相が安定化され,メタ磁性が消失したと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Hf1-xTaxFe2のアーク溶解法での作製に成功した.熱処理と磁化の関係や鉄含有量と磁化の関係について調べることで,ある程度大きな磁気熱量効果を示す条件がわかってきた.アーク溶解時には蒸発分を考慮し,1%過剰に仕込むことが必要である.ただ,過剰に仕込んだ場合でも,均一化のためにアーク溶解で何度も再溶融すると収率が低下するので,熱処理を高温かつ長時間行う必要がある.しかし,この熱処理によりas cast試料よりも磁気熱量効果が大きくなることがわかった.一方で,磁気熱量効果の大きさは先行研究で報告された値よりも小さかったことから,熱処理の条件についてはまだ検討する余地がある.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き熱処理条件を変えながら磁気熱量効果について調べる.これまでは1週間程度を区切りにしていたが,2週間や1ヶ月などさらに長期での熱処理を行い,そのときの磁気熱量効果を明らかにする.また,BやCを添加した試料を作製し,磁気相転移温度や磁気熱量効果について調べる.添加元素であるBやCが,Hf1-xTaxFe2の空隙に侵入型元素として導入されれば,磁気転移温度は添加しない試料よりも上昇すると期待される.
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