磁気冷凍材料には大きな磁気エントロピー変化を示すことが求められる.磁気エントロピー変化は磁気相転移温度近傍で最大値をとることから,磁気相転移温度の制御が重要となる.本課題では反強磁性から強磁性へ一次相転移を示すHf1-xTaxFe2へ侵入型元素を添加したときの磁性について調べた.昨年度までにHf1-xTaFe2By(y>0.1)について,磁性と結晶構造を調べた. B添加するとHfB2相が析出した.添加量を増やすとMgZn2型構造の格子定数は減少していき,y=0.5ではMgZn2相とHfB2相の割合が同程度であった.また,磁化測定からB添加により磁気転移温度が低下した. 最終年度はHf1-xTaFe2By(y<0.1)とBを少量添加したときの磁性と構造について調べた.少量添加したBを均一に混ぜるため,アーク溶解にて反転させての溶融回数を検討した.さらに1000度で一週間熱処理し,氷水へクエンチした.X線の回折ピークはB添加で高角側にシフトしていることから,B添加するとy>0.1と同様にMgZn2型構造の格子定数は減少することを示唆する.強磁性転移温度は,x=0.01で200 K付近であったが,x>0.01では300 K以上へと大幅に上昇した.しかし,x>0.01では常磁性から二次の強磁性転移のみ観測された.二次相転移になったことで磁気エントロピー変化の最大値は減少した. Hf1-xTaFe2Byのy<0.1では磁気転移温度が上昇し,y>0.1ではy=0より低下した.HfFe2の状態密度はフェルミ準位近傍に2つのピークをもつ.B添加でHfとBの化合物が析出して(HfTa)Fe2相のHfが減少するとフェルミ準位が移動し,状態密度の大きさが増減すると予想される.そのため,一次相転移の消失や磁気転移温度の上昇・低下へつながったと考えられる.
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